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菅田将暉×有村架純で『鬼滅』抑えヒット。90年代生まれに怖いほど刺さる映画の「本質」

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 20代が観れば何かしらのダメージを負わずにはいられない映画『花束みたいな恋をした』をあなたはもう観ただろうか。それまで『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が14週連続で週末映画動員ランキング1位だったのが、1月29日(金)の公開週についにその座を受け渡したのが『花束みたいな恋をした』(以下、『花恋』)で、その後もみるみると興行収入を伸ばしている今年最初のヒット作。

花束みたいな恋をした

画像は公式サイトより

 なぜここまで話題を呼び、熱狂を呼んでいるのか。それは、自身の体験と重ね合わせて“語り出さずにはいられない”圧倒的なリアルさと残酷さがあるからだろう。

“90年代生まれ”に刺さってしまう映画たち

 日本映画には、「90年代(とくに中盤)生まれ」の人たちに刺さってしまう映画というものが、実はこれまでにもいくつか公開されている。1つは『桐島、部活やめるってよ』(2012)。原作は朝井リョウの同名小説であるが、高校生活における“スクールカースト”の存在をほとんど初めて物語として顕在化した作品だった。

 もうひとつ挙げると、これも朝井リョウの同名原作を映画化した『何者』(2016)もそうだろう。就職活動における勝者と敗者の構造や、「何者かになりたいけど、なれない」という自意識に語りかけてくるような鋭利さが、就活を経験したものには刺さらずにいられなかった。

 例えば筆者は1995年生まれなのだが、『桐島』は高校2年生、『何者』は大学3年生のときに公開されて接することになった。まさに“直撃”である。

 高校生活と就活という、自分自身と向きあう必要のある「選択」の場面を描いた映画に、登場人物たちと自分を重ね合わせながら観ていた人はおそらく私だけでなく多くいたことだろう

当事者性の高い映画から何を学ぶか

就活生

※画像はイメージです(以下、同じ)

 そしてここにきて現れたのが『花恋』という、「就職」や「転職」、「20代前半〜中盤の揺れる恋愛」を描いたまたもや当事者性の高い映画だった。感情移入しすぎると、冗談ではなく心がズタボロになってしまう可能性のある非常に怖い映画である。でも観てしまったからには、そこからいくらかの学びを得るべきだろう。ときに登場人物たちの姿を反面教師にしながら。

 東京の明大前駅で終電を逃して偶然出会った山音麦(菅田将暉)八谷絹(有村架純)。彼らは、まるで互いに自分自身を鏡で見ているかのようにあらゆる趣味が合うふたりだった。

 映画、文学、音楽、お笑い、演劇。とことん一致するカルチャーへの「好き」が、ふたりの距離を縮めていく映画の前半。しかし、雲行きは徐々に怪しくなってくる。イラストレーターを目指していた麦が、途中でその夢を諦めて物流関係の会社に就職したところを境にして、その溝はもう取り返しがつかないくらい広がってしまうだろう。

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