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巧妙化するリストラの手口。高年収社員に「会社の外で活躍したら?」

学び

 国家資格合格者や、大企業への新卒入社組など、一度レールに乗りさえすれば高年収が約束されていたはずの“勝ち組”たち。だが、そんな彼らも長引く不況や、新型コロナが追い打ちとなり、続々と高年収組から転落しているという。その崩壊の実体とは――?

通勤

※画像はイメージです

高年収社員へのリストラ手口とは

 企業にとって人件費削減の対象になりやすい高年収社員。リストラにあたり、追い出し部屋などが社会問題化した結果、「企業側は解雇のやり口を年々ブラッシュアップさせている」と話すのは、東京管理職ユニオンの鈴木剛執行委員長だ。

鈴木剛氏

鈴木 剛氏

 特に最近は、PIP(業績改善計画)を用いる企業が目立つという。PIPは最初に、従業員に『能力を開発するため』などと称し、短期間に達成困難な課題や、公正な評価が難しい課題を突きつけるのが特徴だ。

「解雇や降格を前提として行われるスキームなので、従業員がどんな結果を出しても、言いがかりをつけてリストラに持ち込むのです。ある大手不動産会社では、45歳以上の社員を対象に『人生の根っこさがし』などと謳ったセカンドキャリアレポートや自己分析、心理テストなど何日にも渡って行っていました。そして、『会社の外で活躍したほうがいい』などと診断を下し、退職勧奨をしていました」

解雇に応じない従業員に対しては、パワハラで圧力

高年収崩壊

PIPで用いられたキャリア分析シート(*管理職ユニオンが相談者の証言をもとに作成)

 抵抗した従業員は、人材会社内の作業部屋に異動させて、ひたすらテレアポの飛び込み営業をさせられていたという。社員はすし詰めのような状態で、1日100件以上のノルマをこなさなければならない。トイレに立つときさえ挙手して監督者に知らせることを強要していた。

 PIPそのものは巧妙なメソッドだが、解雇に応じない従業員に対しては、結局、前時代的なパワハラで圧力をかけているのだ。

「こうした不当な方法で解雇に追い込むやり口は、経営が上向きな外資系企業でも横行しており、上長に解雇ノルマを課している企業さえあります。人を辞めさせる仕組みがまかり通り、その権限を誰かが負うわけです。そこに正当な人事評価などあるはずもなく、必ず理不尽な解雇や降格が現場でおこっているのです

 たとえ高給取りであろうと、一個人では組織の前において無力に等しいのだ。

<取材・文/週刊SPA!編集部>

【鈴木 剛】
労働運動家・全国コミュニティ・ユニオン連合会会長。労働組合が再建した企業等の役員を務めている。著書に『中高年正社員が危ない』(小学館刊)などがある

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