伊勢谷友介は叩かれすぎか?薬物依存の問題点を専門家に聞く
海外では自己使用は非犯罪化する流れが
薬物を違法とすることで、最初の薬物使用を抑止する効果が期待できる。しかし、厳罰主義にはネガティブな側面もある。
「デメリットとして、依存症になった人が治療にアクセスしにくくなります。所持はおろか使用すら犯罪とされていたら、心身の健康を損なったときに病院などの医療機関に駆け込みたくても、警察に通報されることを恐れて行くことができません。
私が出会ってきた患者さんの中にも、覚せい剤の使用発覚を恐れて命の危険のある疾患を患っているのにもかかわらず、救急車を呼ばず放置して自宅で痛みを我慢していた事例がありました。
つまり本来必要な治療すら受けられなくなるのです。そうした事態を考慮して、海外では、薬物の製造・譲渡には罰則があっても、自己使用に関しては非犯罪化するといった流れがあります」
意外と深い薬物と仕事の関連性
薬物依存症の治療に訪れる人には、どのような背景があるのか。斉藤氏曰く「薬を使うことと、働くことが密接に関係している」という。
「薬物に限らず依存症者のライフヒストリーを紐解いていくと、過酷な生育歴、虐待や機能不全家族など逆境体験の中で生き延びてきた人が多い。そして、患者さんの多くが薬物を使用しながら仕事をしています。
薬物依存症者の中には、朝仕事行く前に一発、昼休み中に一発、仕事終わりに一発、そしてセックスする前に一発というエピソードも聞くことができます。
仕事の中では、疲れを忘れてバリバリ働けることを上司や周囲から評価されることで、今までの人生で得られなかった成功体験や自己肯定感を仕事のなかで得られやすくなります」