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伊勢谷友介は叩かれすぎか?薬物依存の問題点を専門家に聞く

暮らし

「人に褒められる、認められるという経験は薬物に劣らないくらいその人の報酬系を刺激しドーパミンがドバっと出るわけです。つまり薬を使いながら仕事で評価されることで自分に特別な力がついたと思えるようになるわけです

 また、仕事をしながら薬物が使い続けられる自分は薬物依存症ではないという確認作業にもなります。でも、結局は薬物を使いながらの仕事はそう長くは続きません。いずれ心身に不調をきたしてしまいます。

 会社を休みがちになり、大切な約束を守ることもできず、社会的信用を失ってしていきます。そして、逮捕されそこでようやく自分の薬物依存症の問題に気づき始め、家族や弁護士に連れられて専門治療の門をたたく訳です」

社会復帰できないほどバッシングするのは疑問

斉藤章佳さん

精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さん

 最後に依存症治療の臨床家として世間を騒がせる薬物関係の報道をどのように受け止めているのか聞いてみた。

「最初にお話したように、日本では生涯の薬物使用経験者が海外と比べて圧倒的に少ないです。日本は薬物の取り締まりが成功している珍しい国といえるでしょう

 それは日本人がそもそも法律を守る民族で、順法精神が高いことが考えられます。とはいえ著名人の薬物の自己使用に関しては、そこまで大きく報道する必要はないと思います。

 逮捕される社会的損失に加えて、バッシングや社会から抹殺するような報道はそのあとに本人が社会復帰する芽を摘むことにもなりかねません。何の罪もない家族のことや本人の過去の顔写真まで出してまで、その人を叩く意味は何なのだろうかと思います。

 過剰な報道によって本人が戻ってくる場所を失ってしまうわけですから。薬物使用の是非よりも、そのような報道によって、その人が立ち直ることができないような構造を作ってしまっていることのほうが大きな問題のような気がしてなりません」

<取材・文/目黒川みより>

フリーペーパーを発行する出版社勤務を経て、現在はWEBデザイン会社にてディレクターとして勤務。お忍びで「心の問題」を扱う執筆活動を続ける

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