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PayPayが独走するスマホ決済。行動ログから未来を予測

コラム

女性比率は上昇傾向。鍵はシニア層

 スマホ決済アプリを使ったのはどんな人たちでしょうか。主要アプリの男女別分布を見ると、au WALLET以外はいずれもやや男性が多い傾向です。総人口と比べると、もう少し女性へのアプローチが必要かもしれません。

 とはいえ、以前の記事だと2018年10月時点のPayPayユーザーは男性91%対女性9%、「100億円あげちゃう! キャンペーン」の同年12月でも64%対36%だったので、着実に女性ユーザーが増えているという見方もできます。

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【図表】主要決済アプリユーザーと総人口(男女別、2019年10月時点)

 年代別だと、いずれのアプリも40代が最多ゾーンで、25.7%(au WALLET)~28.2%(d払い)を占めています。d払いだけは60代以上のユーザーが20%を超える一方、20代は11.1%にとどまり、やや年齢層が高い傾向でした。

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【図表】主要決済アプリユーザーと総人口(年代別、2019年10月)

 しかし総人口と比べると、41.3%に上る60代以上はまだまだ開拓余地が大きいことがわかります。店舗検索サービスのユーザーは60歳以上を全体の約20%に相当する139万人獲得できていて、ポイント還元に対する関心は高いため、ネットやスマホを日常的に使っていないシニアをいかに呼び込むかがキーになりそうです。

LINE-PayPay連合への期待

 シニア層へのリーチチャネルとして、期待したいのはLINEです。ログ上では10月時点で5650万人が保有し、そのうち96%がアクティブという、もはや国民的アプリ。とくに60代以上が最近のユーザー層拡大をリードしていて、2年間の間に1.8倍増加しています(筆者の80歳近い母のスマホにも、最近インストールされました)。

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【図表】LINEアプリユーザー(2017年11月-2019年10月)

 半年間で138億円のマーケティング費用を投じながら目立った成果を出せていないLINE Payの現実が統合によって、そう簡単に覆せるとは思えないものの、ZHDとの統合により、増加中のシニアを含むITサービス日本一の顧客基盤が形成されます。LINEユーザーにLINE PayなりPayPayを使ってもらう施策に、ZHD(あるいはソフトバンクグループ)の資金力が、これまでとは異なる形で投下されるのではないでしょうか。

 シニア層の関心を検索キーワードから確認してみると、アマゾンや楽天等ECのほか、ネットバンキングやキャッシュレス決済への関心は決して低くはない様子がわかります。「郵便料金」や「郵便番号検索」「地図」は50代以下ユーザーだとあまり使われないキーワードで、アプローチのヒントになるかもしれません。

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【図表】60才以上の利用が多い検索キーワード(2019年10月、PC)

 PayPayユーザーは96%がLINEを併用していますが、LINEユーザーの61%はPayPayもLINE Payも使っていません。シニアを中心にキャッシュレス未体験者も少なくないと考えられますので、「最初の1回」をいかに需要喚起できるかがキモになるでしょう。

 新技術が「伝統」になるまで動かないといわれるラガード市場の開拓は、コミュニケーションツールとしてのLINEがじわじわとデファクト・スタンダードの地位を獲得していったネットワーク力や、出血大サービスで国民の心を奪ったPayPayのキャンペーン戦略だけでなく、例えばシニア層への対面説明やシニアが多い店舗の開拓など、人海戦術も必要かもしれません。

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【図表】LINE、LINE PayとPayPayの併用状況(2019年10月時点)

 独走を続けるPayPayのZHDとLINEは、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」を掲げ、重複も多い各事業セグメントでのシナジーを追求する方針です。実際思惑通りに「シナジー」を出せるのかは未知数ですが、とくにキャッシュレス決済に関して政府がターゲットとすべきシニアへのアプローチにとっても、PayPay-LINE連合は福音といえるのではないでしょうか。

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