東京メトロ03系が熊本電鉄に“転職”。波瀾万丈な車両の現況
インテリアは03系の雰囲気を残しつつ
車内は、進行方向1番前の車両の乗車口に整理券発行機、乗務員室前に交通系ICカード対応の運賃箱、運賃表が設置された。
乗降用ドア上の3色LED式旅客情報案装置は、“普通の路線図”に転用。次駅案内は進行方向が先頭になる運賃表に掲示されており、合理的といえる。
車端部の優先席は一角を撤去し、車椅子スペースを設けた。その上に先述の冷房機が設置された。
このほか、室内灯のLED化、中吊り広告をはさむ器具、車両と車両のあいだを通り抜けるドアがすべて撤去された。
03形で衝撃なのは、運転台をマスコン(主幹制御器)とブレーキのツーハンドルから、一体化した両手操作式のワンハンドルマスコンに更新されたこと。熊本電鉄によると、TIS(Train-control Information Management System:車両制御情報管理装置)を撤去したため、運転台のハンドルを変える必要があったという。
ワンハンドルマスコンの片手部分にデッドマン装置(これを離すと自動的に非常ブレーキがかかる)、運転台には勾配起動スイッチ、定速ボタン、ワンマン運転対応機器が設置された。
私の想像をはるかに超えるほど、大掛かりな改造を受けた03形。01形とともに、“熊本電鉄のツートップ”として、沿線だけではなく、観光客などにも親しまれる存在になることを切に願う。
“波瀾万丈の車両”03系の現況
東京メトロ03系は営団地下鉄の1988年に登場し、1994年まで42編成336両が投入された(2001年には事故廃車の代替車1両を新製)。増備途中で設計変更が多く、まさに“波瀾万丈の車両”と言えよう。
2010年代に入ると、日比谷線車両20メートル化の検討、03系改修工事の検討の時期が重なった。東京メトロは03系の改修工事を必要最小限にとどめ、第1~8・35・36編成を対象に実施された。
その後、日比谷線のトンネルは20メートル車の通行に支障がないことが判明し、2016年に日比谷線第3世代車両として、13000系を投入。03系は2017年2月1日から廃車が始まると、瞬く間に数を減らし、2019年10月時点、第1・2・7・36編成のみ在籍している。
その一方、18メートル車が幸いし、中小私鉄数社に譲渡(移籍)される模様だ。“転職先”での活躍にも注目したい。
【取材協力:熊本電気鉄道、東京地下鉄】
<取材・文・撮影/岸田法眼>