大戸屋は「バイトテロ謝罪会見」で成功。ネット炎上する/しない企業の違いとは
雪印の集団食中毒事件のインパクト
平成の時代を振り返ってみても、2000年6月から7月にかけて近畿地方を中心に起こった、当時の雪印乳業(現・雪印メグミルク)の乳製品による集団食中毒事件は印象的だった。
会見場を後にしようとする社長が記者に放った「私は寝てないんだ!」の一言が、波紋を呼び、消費者の不信感を高めた。これが遠因となって同社はグループ解体に至った。
平成に起きた炎上事件で、もっとも適切な対応はどこなのか。前出の石川氏は、今年2月に発覚した「大戸屋のバイトテロ問題」だと語る。アルバイト店員が、店内で露わにした下半身をお盆で隠す不適切動画をネット上にアップした一件だ。
「大戸屋は、3月4日に会見して1週間後の12日、ほぼ全店を1日休業し、研修と店舗の一斉清掃を行うとしました。これは積極性を印象づけたスピード感のある対応でした。3月12日の研修や掃除の様子は、テレビカメラも入れて見せていましたが、これも良い判断。何かしらの善後策を打った後には、その進捗をメディアに公開するなど見てもらうことが重要です」
消費者の安心感につなげた大戸屋の会見
こうした行動が実効性のアピールになる上、消費者からの安心感につながるのだ。大戸屋の会見でさらに良かった点があるという。
「もうひとつ良かったのは、ほぼ全店舗が1日休業することにより、1億円の損失になると公表した点です。1億円の売り上げを失ってもやるというのは、それだけ覚悟を持って問題に取り組んでいる企業姿勢を示すことでもあります」
とはいえ、令和の時代には新たな炎上との向き合い方が求められる。企業側はすべての炎上に対し、謝罪をする必要がないケースもあるのだ。
「明らかに事実誤認のもの、悪意のある嫌がらせによるもの、そして賛否両論ある社会問題への問いかけを企業として行うケース、広告表現などの好みによって炎上しているものについては、条件反射的に謝罪する必要はありません。とくに『事実誤認』『嫌がらせ』については、無視するよりは、HPなどで『SNS上で○○といわれていますが実際は××です』などと訂正すべきでしょう。さらにひどい場合は、個別に法的対処を検討すべきでしょう」
もちろん「人種差別」「女性差別」など倫理的に見て明らかに問題があるものは、不買運動につながる恐れもあるため、すぐに対応すべきだという。また、企業の本業とは関係のない、業績に直結しない事象に対する批判も、謝罪しなくてよいケースもある。
炎上しない企業のSNSアカウントの運営法は?
最後に、人気企業ツイッターアカウントの代表格である「シャープ」を例に、上手なSNSの運用法を聞いた。新入社員で広報部門に配属になったならば参考にしてほしい。
「シャープのアカウントの場合、常にフォロワーやリプライに対してコメントへ返す姿勢がみられます。つまり、フォロワーたちと平常時からコミュニケーションが取れていて、アカウントにファンがついているということが、謝罪時のレピュテーション(評判)ダメージを緩和してくれます。
シャープの“製品アカウント”の発言が炎上し、アカウント停止になった際、シャープの公式アカウントも謝罪を行いましたが、通常時のコミュニケーションの積み重ねと、丁寧な謝罪によって事なきを得たように思えます。こまめなメンテナンス、フォロワーに対するコミュニケーション量の多さと他社製品やユーザーを貶めない姿勢が炎上を広げないアカウントの特徴です」
炎上した事象に対し、企業は謝罪をすることで、これまで対処してきた。もちろん、時には謝罪をすることも必要だが、これからは悪意ある炎上を回避しつつ、ユーザーとの良き関係を築けるよう努力すべきだろう。
<取材・文/シルバー井荻>