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誰もが依存症になるリスクを抱えている。ソーシャルワーカーに聞く治療法

――ソーシャルワーカーという仕事の内容について教えてください。

斉藤:堅苦しく言うと、社会福祉士、精神保健福祉士などの資格を有している場合が多く、社会福祉事業に従事する高度な理論や技術を習得した専門職の総称をソーシャルワーカーといいます。ただ資格を持っていなくても名乗ることは可能です。

 仕事をしていくためには、社会福祉学や心理学などの知識や、面接のトレーニングの必要がなんですけど、依存症臨床について言うと、そういった技法は極論現場では役に立たないというのが私の実感です。

――意外とぶっちゃけますね(笑)。

斉藤:みんな飲むときは飲むし、ギャンブルをやるときはやる。どんな大学病院の、どんな偉い先生が担当したって、スリップするときはスリップします。つまり私たちは依存症という病気に対して無力なんです。

 だからこそ上から目線ではなくてフラットな対等な関係を築いていくことが重要です。等身大の自分で向き合うべく自分の「マイストーリー」を話すようにしています。なぜ私は今ここにいるのか、という話です。

「救いたい」ではなく、「救うことができない」

対話

――さっきのお話に出てきた“自分の弱さをオープンにする”ことと繋がりますね。依存症の治療にあたっては当事者と同じ目線で立ち、共感することが大切ということですか。

斉藤:そこは一概に言えません。同じような経験をして、それを乗り越えてある程度やめているクリーンな期間があればいいですが、今まさにその問題を抱えているときにこの仕事に就くと距離が取れなくなって共倒れになります。

 当事者の立場で共感し過ぎてしまったり、「私があなたを救いたい」という思いが強い人はこの仕事に向いてないと思います。人を救いたいという思いは一見素晴らしいことのように聞こえますが、その背景にはその人の傲慢さが見え隠れしています。酒をやめるのは私ではなくあなたです。かわりにやめることもやめさせることもできません。

 だからこそ、「私はあなたを救うことはできない」という前提から関係は始まります。逆説的ですよね。依存症からの回復にはパラドキシカルなことがたくさんあります。

――それでは、依存症患者がクリニックで受診する意味はどんなところにあるのでしょうか。

斉藤:そもそも依存症の治療というのは、自分の力で歩いてもらうことなんですよね。我々が問題を解決するとか、困難を取り除くことではありません。カーリングのように周囲が必死になって床を磨く姿を想像してみてください。転ぶことが失敗ではないんです。転んでもいいんです。転んでから起き上がらないことが失敗です。

 これをタフラブ(見守る愛)というんですけど、基本的には相手の話をよく聞く、見守りつつ本人が「助けて」というサインを出したり、訴えてきたときにいつでも手を差しのべるという距離感が重要ですね。そのための準備は惜しまないようにしたいです。

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