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増え続ける日本のHIV感染率。アートとダンスで伝える実情と課題

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 2018年12月2日にキース・へリング生誕60周年と世界エイズデー(World AIDS Day:12月1日)にちなんだイベント「言葉とダンスのフェスティバル」が、NPO(特定非営利活動)法人ヴィンテージ・エイジング・クラブ(VINTAGE AGING CLUB)主催のもと、中村キース・へリング美術館で開催されました。

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イベント会場となった「中村キース・へリング美術館」(山梨県北杜市小淵沢町)

かつて世界中をパニックに陥れたエイズの脅威

 世界エイズデーは、エイズ(AIDS/後天性免疫不全症候群)の予防と患者、エイズを引き起こすHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者に対する差別・偏見の解消を目指し、WHO(世界保健機関)より1988年に制定されました。毎年この日の前後には啓発活動が世界各地で行われています。

 1980年頃に世界的に流行していたエイズですが、当時は、研究はおろか啓発も進んでおらず確実に死に至る病として認識されていました。また、男性同性愛者の性交渉でのみ起きるという誤った認識が一般的でした。

 1987年1月には日本国内初となる女性の感染者が神戸市で確認されたことが報じられました。これを受けて市の保健所に検査の問い合わせが殺到。マスコミによる報道も不安と危機感を煽り、日本中がパニックとなりました。俗にいう「エイズパニック」です。

次々とエイズによって命を落としていく著名人たち

 映画『ボヘミアン・ラプソディ』で描かれた「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーのように、1980年から1990年代にかけて多くの著名人がエイズで命を落としたことも世界的な脅威として知らしめる要因となったといえるでしょう。

 1980年代アメリカ現代美術を代表するアーティスト、キース・へリングもそのひとりです。

 キースは、自らのセクシャリティを隠すことなく、31歳で死去するまでオープンリーゲイ(=ゲイであることを明かしている)のアーティストとして活動してきました。その作風はストリート感覚な美的センスを感じさせるもので「グラフィティ」と称されています。

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キース・ヘリングの作品が放つメッセージを体感できる空間設計

 多くの作品は、人物や動物をシンプルな太い線で表現されていて、まるでピクトグラム(標識)を思わせます。これらは彼が学生時代に学んだ記号論や、プリミティブ・アート、日本のカリグラフィー(書道)などからの影響とされています。

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