「菅正剛さん、バンドやろうぜ!」 菅首相長男の自立を、 東大中退ラッパーが考える
2月4日発売の『週刊文春』がスクープして以降、連日話題になっている菅義偉総理大臣の長男・正剛(せいごう)氏の総務省への接待報道。その背景にあるものとは?
東京大学中退、明晰な頭脳を生かし、マルチに活躍するラッパー・ダースレイダー(43)の連載「時事問題に吠える!」では現代日本で起きている政治や社会の問題に斬り込む。
この問題から見えてくる「文春にタダ乗りする他メディアの情けなさ」を指摘した前回に引き続き、今回は正剛氏の生い立ちや、菅首相との親子関係にまで迫る。
正剛氏の状況は、僕にも重なる部分がある
菅首相の長男・正剛氏に関しては、少し別の視点を僕は持っています。それは僕自身にも重なるところがあるからです。僕の場合は父親が新聞記者だったんですけど、テレビとかにも出たりして、ある程度名の知れた記者でした。
僕自身はその父親の仕事の後には続かずにラッパーになります。大学を中退して、音楽の道に進んで好きなことをやっていたと。20代のころはアルバムを出したりしたりしつつ、収入もたいしたことはありませんでした。
大学在学中に父が他界し、母もすでに他界していたため、父親の世話になったり、仕事を斡旋してもらうことがなく、自分でなんとかしなきゃいけないところに放り込まれます。ですが、もし父親が存命で、僕が20代後半まで音楽で芽が出ない、という状況になっていたときに、父親に「だったら知り合いがたくさんいるから、知り合いのところで面倒みてもらえ」と言われたら、果たしてどれだけ抵抗できたのかな、と今でも考えます。
自分のことを評価するのは難しいんですが「音楽活動はたいしたお金にならない」「これから人生長いんだぞ」「いつまでプラプラしてるんだ」と言われたときに、どれだけ自分のやりたいこと、好きな音楽に打ち込めたかはわかりません。ただ、僕の場合は幸か不幸かそんな状況になる前に両親が他界してしまったので、自分でなんとかするしかない人生になっていったわけですが。
正剛氏は“父親レール上”の人生を歩みたかったのか
一方の正剛氏はもともとバンド活動をやっていて、仕事にも就かずにプラプラしていたところを、父親である当時の菅総務大臣が「そんなんじゃだめだから」と自分の秘書官にするわけです。
もちろん僕は正剛氏とお会いしたこともないし、どんな人物だかわからないので、どの程度で情熱で音楽をやっていたかは知る由(よし)もないんですが、果たして彼は、父親の秘書官という人生を歩みたかったのか。
ただ事実として父親に拾われる形で秘書官になり、その後、父親の同郷の支援者が社長を務める放送事業会社・東北新社に就職することになると。完全に“父親レール”に乗っかって人生が変わっていくわけですよね。そこで何をするかというと、当然父親の権威を借りて、自社と放送行政を担う総務省を繋ぐパイプ役として活動していくと。
菅首相は「自分と長男は別人格」という言い方をしていましたが、正剛氏のすることは菅首相の人格の中での行動になっていくと思うんですよね。だから別人格ではなく、菅首相は自分が敷いたレールで、自分の分身として息子を扱っている。これに対して正剛氏がどういう気持ちだったのかはわかりませんが、少なくとも別人格ではなく、同一人格の中に納められてしまう人生になっていくと。