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「菅正剛さん、バンドやろうぜ!」 菅首相長男の自立を、  東大中退ラッパーが考える

ビジネス

自民党内で家族制度や絆の話をするきっかけに

 僕自身もかつてそういったものに向き合わなきゃいけないのではないのかと思ったことがあります。そして、実は世の中の多くの息子、娘たちが感じる葛藤でもあると思います。

 今回の問題では、菅首相も1人の家庭人であり、自分の息子が40代になってもその生き方に過度に干渉する子離れができていない親であり、子供のほうも結局はそんな父親の権威の中で仕事をする親離れのできていない子である、という構図が浮かび上がってきました。

 菅首相は自民党の総裁でもありますが、自民党は日本の伝統的な家族制度の話や、家族の絆の話をよくします。しかし、安倍晋三前首相も夫人・昭恵さんの奔放さをコントロールできていないということがありました。

 別にコントロールする必要がないという意味では非常に正しいと思うんですけど、そういった、彼らの家族関係と党のイメージがかい離している。だったら自分たちの実生活のようなリアリズムに基づいて、自民党の中で議論するということも、この件をきっかけにぜひ進めてほしいと思います。

菅首相、正剛氏、メディアに繋がれた縄が解かれるかも

国会議事堂

 接待の内容や金額、何を食べたかという話も、話としては面白いんですけどね。

 構造としては、前回の話にもあったように放送免許の許諾権を政府が握っている中で、首相の息子が関連の衛星チャンネルを持っている“父の支援者”の会社に就職し、総務省を接待していることを、日本のメディアがどれだけ報じられるのか? という試金石にも今回はなっていると思う。

 日本のメディアの首にずっとついていた縄が外れるかもしれない。そして正剛氏に繋がれていた縄が解き放たれるかもしれない。さらには、菅首相を縛っていた「自分は既得権益を打破するんだ」「前例を踏襲しないんだ」といった大きい看板からも開放されるかもしれない。

 そういった意味で、いろいろなものが解きほぐれていくが、その中で日本の社会がなぜこうした窮屈なことになっているのか? そしてなぜ官僚たちは自分に正直にならずに答弁のときに記憶がすぐなくなったり、自分たちがやっていることを誇れないのか? そういった問題点に至るまで、いろいろな課題が浮かび上がってくる案件であると思います。だから、まずは菅正剛さん、バンドやろうぜ!

<TEXT/ダースレイダー 構成/bizSPA!取材班 撮影/山口康仁>

1977年パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、ラップ活動に傾倒し中退。2010年6⽉に脳梗塞で倒れ合併症で左⽬を失明するも、現在は司会や執筆と様々な活動を続けている。

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