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「完全な妖怪になりたい」京大卒の30歳ピン芸人が描く“異色のキャリア”

暮らし

大学院とお笑いの両立の日々

九月

舞台に立とうと思ったきっかけは「ネタができたから」

──とても忙しい日々を過ごされていたのですね。

九月:最初は暗中模索、試行錯誤の連続でした。なにせ、誰にも習わず勝手に始めてしまったものですから、手探りでやっていくしかなかったんです。でもその作業が楽しくて、手足が止まらなくなる感覚がありました。自然と活動のペースを上げはじめ、お笑いと生活との距離が縮まっていきました。2017年頃からは、大学院に通いながら夜間は大阪・梅田のショーパブに出演するようになりました。

──大学院との両立は大変ではなかったですか?

九月:毎日寝られない日々が続きました。行き帰りの京阪電車の中だけで眠れるんです。でもそれはそれで、いかにも妖怪になる過程っぽくて楽しかったです。なんせ青森や京都に続いて大阪の養分まで吸えるんですから! 大阪も色が濃くて大好きな土地です。そうやって日々の生活に没頭して、何かを面白がろう、何か楽しいことはないかと気の向くまま懸命に活動しているうち、気づいたらいつの間にか芸人になっていました。

コンビニの明かりを頼りに論文を読んだ

九月

単独公演は1人芝居風のコントが中心だ

──お金や体調は大丈夫でしたか?

九月:当時は夢中過ぎて大変さに気付かなかったのですが、今思えばめちゃくちゃ大変だったのだと思います。毎日眠いし、お金は全然ないし、部屋の電気が止まったらコンビニの明かりを頼りに論文を読んだり、ネタを書いたりしていました。思えば毎日うっすら体調が悪かったです。

 でも、それも自分に似合う下積みだなと思っていました。妖怪って体調悪そうじゃないですか。だから楽しくて仕方がなかったです。しばらくは大学院生との二足の草鞋を履いていたのですが、大学院を修了したのち、活動をお笑いのみに絞りました。その後、2020年に上京し、活動拠点を移しました。疫病にも負けず、毎日コントを作り続け、とても楽しく暮らしています。

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