「日本の100円ショップ」がオランダにも!“不毛の地”ヨーロッパにもブームは来るのか
「言葉の壁」は障壁にならない?
冒頭で述べた通り、100均商品の店とは知らずとも、「メイドインジャパン」の良質な商品を売っているという認識での来店者は多い。彼らの訪問動機には、ネットの影響も少なからずある。「TikTokで見たこの日本のお菓子が欲しい」とか「ネットの口コミで〈日本のラップがすごくいい〉と見たんだけど」と、「話題の日本製品」を探しに来るのだ。
しかし商品は日本で売られているものそのままで、名称や使い方も日本語表記しかないものもある。特に便利グッズ系などは、どういうシチュエーションで使うのかわかるのだろうか。
「〈どうやって使うの?〉と質問されることも多いですが、みなさんすごくよく商品を観察しています。パッケージ写真や商品の形などから〈あ、これはこういう時に使うんだ〉〈こんな商品初めて見た! あったらすごく便利!〉という発見を楽しんでいるみたいです」と西田さんは話す。
そういう来店者は「他にもおもしろいものがないか」と、店内をくまなく回り、滞在時間も長い傾向がある。日本の100均でもお目当ての商品以外に、何か掘り出し物はないか、良い商品はないかと探す人も多いだろう。ここオランダで100均商品にハマる人たちも、同じ行動のようだ。
客の「発見」だけでなく店からの「発信」も視野に
もちろん店側も客の「発見」だけに委ねているわけではない。オーナーの構想として「今後はお店の100均商品を使ったワークショップをやりたい」というのだ。例えば寿司つくりワークショップ。店の商品を実際に使い、「これを使えば自分でも簡単に寿司が作れる!」という体験を提供したいと考えているそうだ。
実現すればきっと、ますます100均商品のファンが増えることだろう。現地の人にとっては目新しい商品ばかりなだけに、日本の100円ショップではあまり見られないそうした「発信」も大切かもしれない。
オランダは九州とほぼ同じ面積の小さな国で、2022年1月付けで、在住日本人は約6800人。もっとも多く住むアムステルフェーンでも、たったの1600人ほどだ(オランダ統計局オープンデータ)。
そのような中で日本人専門の店ではなく、オランダ人を始めとした多国籍な住人達に受け入れられてきた「PIKA PIKA JAPAN」。当初は異端の存在だった寿司やラーメンが今ではすっかり海外で愛されているように、欧州で「日本の100均商品」がどうやって地元になじみ、人気を得ていくかのヒントがここにあるかもしれない。
<取材・文・撮影/福成海央>