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時給3750円のハンバーガー店バイト…在米ライターが明かす“超円安インフレ”の衝撃

ビジネス

アメリカ人は節約や貯金をしない?

 キャリアや業界にもよるが、「ちょっと給料が上がったくらいでは、この物価高に見合わない」と嘆くのは40代の公務員男性、Tさん。シアトルでの前年比9%のインフレを考えれば、給料が5%上がったとしても、4%足りない。

 ならば転職という選択肢もあるが、大量レイオフが突然、しかも頻繁に行われるアメリカではリスクが高い。シアトル経済を支える世界的企業、マイクロソフトも先日、1000人のレイオフを発表したばかりだ。「3倍近い給料で転職した元同僚もいるけれど、安定している公務員職はやはり魅力」と語る。

 現在はコロナ禍のうっぷんを晴らすべく、旅に飲食、イベントと大忙しのアメリカ人。もともと日本人とくらべて貯金という概念があまりないようだ。先の心配より今を楽しむことにフォーカスし、借金をもいとわない、良く言えば自分の気持ちを大切にして生きる大らかな国民性。このインフレ直撃でも、頑張って節約しているという印象はない。

 アメリカ人の筆者の夫いわく、「どうせインフレが進むのだから、何でも今から買っておいて、支払いを先延ばしにできればできるほど良い。投資ならともかく、お金の価値が目減りする貯金なんて、もってのほか」らしい。

ワンルームの平均的な家賃は月25万円超!

アメリカ

シアトルではマスクなしで人が集まれるようになり、レストランやバーもフルサービスの店内飲食を開始している

 30代のサービス業女性、Cさんも、節約と言えば車を手放したことくらい。「以前は車を持っていたけど、ガソリン代や維持費がかかるし、今は電車やバスを使ってる。都会暮らしで職場も徒歩圏内だから、それでも全然困らない」と、満足げだ。シアトルではリンク・ライトレールという電車の新路線が続々と発表され、若者を中心に利用が広がっている。

 ただ、細かい支出までは気にしていない。「新作ドラマとリアリティー番組はだいたいチェックしてるから、ストリーミングのサブスクも続けるつもり」。コロナ禍を経て、もはや習慣となったNetflixなどの動画ストリーミング・サービスは外せないと考えているアメリカ人の割合は高いという報道もある。Cさんはパートナーとの外食も大好き。その日はオペラを観に行くとも言っていた。変わらずに日常を楽しんでいる様子だ

 とはいえ、食料品への支出が過去1年間で13.5%上昇(連邦政府発表による主要都市平均)している現実は揺るがない。家賃も不動産価格も高止まりしたまま。シアトル周辺では、狭くてボロでも1億円超えの一軒家がゴロゴロしている。シアトル市のワンルームの平均的な家賃は月1673ドル(25万950円)で、前年比10%の値上がりだ。

 注目されているのが、今年のホリデー・シーズンの消費動向。アメリカでは、11月のサンクスギビング(感謝祭)、12月のクリスマス、ハヌカ、クワンザなどのある時期をホリデー・シーズンと言い、アメリカ人が1年でいちばんお金を使う、アメリカにおける年末商戦である。

 ここぞとばかりに散々遊び尽くし、消費しまくっているアメリカ人も、そろそろ財布の紐を締めるのでは、という予想も。消費が冷え込み、経済の停滞が始まるかどうかの正念場だ。

<取材・文・撮影/ハントシンガー典子>

アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児、インタビュー、コミック/イラストエッセイなど、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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