コロナで大打撃「ラオックス」が反撃に。小売業界の“海外進出&撤退”を振り返る
大手流通で海外コンビニM&Aの動き
【2022年1月(その1)】
ローソン、中国コンビニ「天虹微喔」買収(1月4日)
ミニストップ(イオン)、「韓国ミニストップ」売却(1月22日)
2022年の流通業界を最初に賑わせた話題も海外。大手流通企業2社による海外コンビニのM&Aの動きであった。「ローソン」が買収を発表した「天虹微喔」(の前身)は2003年に設立。2014年にスーパーマーケットなどを展開する天虹数科商業の傘下に入ったことで現店名となった。資本金は5,500万元(約11億円)。
「天虹微喔」は都心型店舗に強みを持っており、2021年12月時点で深圳市・東莞市・厦門市など広東省・福建省を中心に203店舗を展開する。これらの店舗は、順次ローソンの店舗へと生まれ変わる予定だ。
ローソンが中国に進出したのは1996年のことだが、初の黒字化は2020年。約30年近く苦戦し続けてきたものの、2020年からは南京市にプレハブ型のミニ店舗を増殖させるなどコロナ禍のなかでも海外事業、とくに中国事業を強化しており、今年(2022年)には中国での店舗数が5000店を超えた。
一方で、先述したとおり中国政府は現在も「ゼロコロナ政策」を維持しており、コロナ禍が収まらないなか流通各社も大きな影響を受けている。各社の中国事業拡大は吉と出るか、それとも凶と出るのか――それはコロナ禍が終わってみなければわからない。
売却論が出ていた韓国の「ミニストップ」
韓国撤退を発表したイオングループのコンビニ「ミニストップ」が韓国に初進出したのは1990年のこと。韓国ミニストップは日本国内のミニストップ総店舗数より多い約2600店舗を展開しているが、近年は業績が低迷しており、ここ数年は売却論が取りざたされていた。
韓国では1996年の流通市場開放以降、日本のさまざまな大手流通企業が出店、もしくは出店検討してきたものの、「良品計画(無印良品)」や「ABC-MART」などといった専門店・業態特化型店舗を除いて成功例は少ない。流通市場が開放された1990年代にはすでに国内でさまざまな流通企業が育っており、韓国民の嗜好を熟知した地元企業には勝つことが難しかったことも一因であろう。
2022年現在、韓国で多店舗展開する日系の総合流通企業はコンビニの「ミニストップ」、ディスカウントストアの「トライアル」などごくわずか。ミニストップはロッテグループが約305億円で買収することを発表しており、今後は同グループである「コリアセブン(セブン-イレブン)」やロッテグループのミニスーパー「e-mart」の店舗となる見込みだ。
偶然ではあるものの、2022年のはじめは海外における日系小売業の動きが続くこととなった。本連載では引き続き「1月における国内における小売業の動き」を追っていく。
<取材・文・撮影/都市商業研究所 若杉優貴>