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物価上昇はいつまで続く?ウクライナ侵攻だけじゃない“深刻な要因”

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インフレが起きている4、5つ目の理由

インフレ

※画像はイメージです(以下同じ)

 4点目が米中対立です。中国の驚異的な成長を主な背景に米中覇権争いは激化しています。互いに貿易品に対して関税をかけあっており、これも商品価格の高騰につながっています。執筆時点でアメリカが対中関税を見直す報道が入ってきており、これは今後インフレ圧力の改善につながる可能性があります。

 5点目がウクライナ侵攻です。各国がロシアに対して経済制裁を科し、ロシアからの資源輸入を減らすことで、資源調達のコストは上昇します。物事の道理はさておき、よりシンプルに表現すると、サプライヤーが一つ減るので、またはサプライヤーと揉めているので資源価格が上昇するということです。

 他にも細かな要因はあるかもしれませんが、ざっと主な現象を提示しました。ではインフレ圧力はいつになれば弱まるのか? ということが重要です。私はこれらのインフレ要因が捌(は)けると、そこがインフレのピークになると考えています

 新型コロナウイルスに対するワクチンやその他の感染症対策の普及により、グローバルに見れば新型コロナウイルスの新規感染者数、新規死亡者数ともに減少していますので、この点は前向きな材料と言えます。ただし中国が頑なにゼロコロナ政策を敷いて、サプライチェーンの目詰まりを引き起こしていることは懸念材料で、これは下手をすると1~2年間程度続く可能性があると考えます。

ロシア関連のインフレ上昇圧力は続く

 また米中対立の激化を主因とした関税の上昇ですが、これはアメリカ政府から見直しの動きが見られるなど、ここにきてやや前向きな兆候が見られています。ですが段階的に引き上げてきた関税ですので、戻す時も段階的に行っていくのであれば、こちらも1~2年間にわたって影響を及ぼし続けるでしょう。

 また関税の見直しそのものが現在の急進的なインフレへの一時的な対応であって、そもそも米中対立については世界の覇権争いでもありますので、競争そのものは長期的に行われる可能性が高く、このように考えれば、やはり中長期にわたって米中間で何かしらの軋轢は生むと思いますので、あまり楽観視しないほうがよいでしょう。

 またウクライナ侵攻はいまだに終わりが見えていませんし、戦後にロシアへの経済制裁が急に解除されることもないでしょうから、ロシア関連のインフレ上昇圧力は、今後数年間は掛かり続ける点に注意しておく必要があります。つまり一部に前向きな材料は見られるものの、インフレ上昇圧力が今後数年間にわたって掛かり続けることを考えれば、当然、経済活動に負荷がかかってくることになります。

 こういった推測が金融市場では広がっており、それが株価の下押し圧力や円安の材料としてくすぶり続けています。このインフレと経済の関係にについて詳しく見ていきましょう。

ウクライナ侵攻後の世界経済と 金融マーケット

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外国為替を通じて世界情勢を見ている著者が、ウクライナ侵攻に関して情報を整理し、将来の世界経済や金融マーケットのシナリオを提示

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