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なぜ男女間の賃金格差が生まれるのか。元凶は日本特有のシステムに

ビジネス

元凶は1960年代型のシステムだった

これからの賃金

『これからの賃金』(旬報社)より

 そもそも、なぜ日本の男女間賃金格差は大きいのか。遠藤氏曰く「一言で言えば、“1960年代型日本システム”が原因です」とのことだ。

「日本企業は長期勤続の正社員は勤続年数とともに昇給し、その賃金水準は従事する職務に関係なく高く、その多数は男性です。一方、女性は正社員の割合が低く、仮に正社員になっても結婚出産育児で早期退職せざるをえない。そのため、勤続年数は短く、賃金水準は低くなります。加えて、早期退職しなくても、女性は家事負担が大きく『24時間戦えない』ため、どうしても男性よりも昇進・昇給が遅れやすい。

 また、早期退職した女性が再度働くにしても、非正規労働者としての雇用がほとんど。『非正規労働者は、勤続年数とともに昇給しなくて良く、従事する職務に関係がなく、低賃金でかまわない』という認識が日本では強い。これらを総合して、男女間賃金格差は大きいのです」

“男性が主な稼ぎ手”という意識が根強く、それが 1960年代型日本システムという形で私たちの生活に定着したことが大きいようだ。

 実際、デスクワークが増えて体力面でも不利な女性でも活躍しやすくなったものの、依然として格差が解消されないことついて、「それだけ1960年代型日本システムが根深いからです。『女性が多い仕事=低賃金』という認識に日本は支配されています」と遠藤氏は語った。

ヨーロッパはなぜ格差が少ない?

 日本の現状はわかった。OECDの男女間賃金格差を見ると、スウェーデン(7.4)、デンマーク(5.1)など、ヨーロッパ諸国の格差は低い。なぜヨーロッパ諸国では、男女間格差が少ないのか。

「ヨーロッパ諸国の賃金は、従事する職務に賃金額が決まっており、その職務に従事する労働者に賃金額が支払われる『職務基準賃金(職務給)』が一般的だからです。

 そもそも、日本のように年齢や勤続年数などによって給与が決まる『属人基準賃金(属人給)』は、ヨーロッパ社会に存在しないに等しい。一方、ヨーロッパでは大企業でも零細企業でも、全ての労働者は職務基準賃金で支払われおり、パートタイム労働者も有期雇用労働者もフルタイム労働者も、働き方に関係なく全員が職務基準賃金と言っても良いです。

 とはいえ、ヨーロッパでも女性が多く従事する職務は低賃金です。そこで、職務が異なっても、職務の価値が同一なら、同一額の賃金を支払う『同一価値労働同一賃金』が広まりました。この同一価値労働同一賃金が大原則となり、尊重されるようになった結果、男女間賃金格差の縮小につながったと考えられます

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