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「石油元売り」大手3社が最高益に。原油価格上昇でもなぜ儲かるのか

ビジネス

出光とコスモも2022/3期で回復

出光

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【出光興産(2019/3期~2022/3期)】
売上高:4兆4251億円→6兆459億円→4兆5567億円→6兆6868億円
営業利益:1793億円→▲39億円→1401億円→4345億円
最終利益:815億円→▲229億円→349億円→2795億円

 出光興産の場合は2020/3期で大幅な増収を迎えていますが、これは同じく石油元売だった昭和シェル石油を子会社化したためです。翌2021/3期に合併以前の水準まで落ち込みましたが、2022/3期に回復しました。吸収合併の件を除けば元売大手はいずれも同じく景気に左右されていることがわかります。

コスモ

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【コスモエネルギーHD(2019/3期~2022/3期)】
売上高:2兆7704億円→2兆7380億円→2兆2333億円→2兆4405億円
営業利益:947億円→139億円→1013億円→2353億円
最終利益:531億円→▲282億円→859億円→1389億円

 コスモエネルギーHDも2020/3期でやや落ち込んで2021/3期で減収幅が拡大し、2022/3期で回復するという同じ流れを汲んでいます。

原油価格は上昇しているのに過去最高益の不思議

 次に利益面を見ていきましょう。3社とも2020/3期に最終赤字となり、コロナ禍で大幅減収となったはずの2021/3期に黒字に転じています。そして原油価格がさらに高騰した2022/3期に3社とも過去最高益を記録しました。なお、2019/3期末から2022/3期末時点での月平均原油価格(ドバイ原油)の推移は以下の通りです。

【ドバイ原油価格(2019/3期末~2022/3期)】
ドバイ原油価格(ドル/バレル):66.80ドル→33.75ドル→63.95ドル→113.11ドル

 売上高が減少したり、仕入れ品である原油価格が上昇すると石油元売の利益は目減りしそうな印象がありますが、実際には2021/3期のように売上高に関係なく原油価格上昇局面で増益となっていることが分かります。これは通常の製造業や問屋と違い、石油元売業界は仕入れから供給までの間にタイムラグが発生するためです

 日本では原油をタンカーで輸入するため、産油国で購入した原油が日本に入るまで約1か月程度かかります。つまり製油所では過去に購入した原油を原価として計上することになります。燃料需要の回復局面では原油価格とガソリン等の燃料価格が連動する形で上昇するため、高い売価を確保しつつ低い原価を計上することで利益を拡大することができるのです

 もちろん景気後退局面では、原油価格とガソリン価格が共に下落するため2020/3期のように大幅な減益となってしまいます。

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