脚光を浴びる「アニメの聖地」山梨県。地元の生活はどう変わったか
にわかに活気づく町、個人商店にも観光客が
地元を舞台とした作品が人気となるなか、地域はどのように変わっていったのか――。小さな町は「聖地」として脚光を浴びたことでにわかに活気づいた。
地元では作中に登場した商品や場所はもちろん、それ以外の周辺の観光地も「聖地巡礼客」の誘致合戦が起きた。今や土産品売場で饅頭などと一緒にアニメグッズが並んでいることはもちろん、これまで生活雑貨を売っていた個人商店さえもが突如アニメグッズの売場を設け、そして観光客が立ち寄る光景が見られる、ということも珍しくなくなった(コロナ禍前よりは減ってしまったが)。
そうした商店のなかには元々は「集客のため」というよりも「近所が人気アニメに出ていることを喜んで/面白がって」アニメグッズコーナーを作っているところも少なくない一方、身延町内の国道沿いで「ゆるキャン△」のスタンプを設置しているある店舗は「(コロナ禍のなか)聖地巡礼の需要がないと経営が厳しかった」と話すほどだ。
聖地が「溶け込んでいる生活」が当たり前に
最近はアニメファンに「僕は山梨に住んでるんですよね~」と言うだけで羨ましがられることも多い。しかし、生活圏に様々な作品の「聖地」が増え「聖地が日常に溶け込んでいる生活」が当たり前になってきてからは「生活の中で聖地を意識する」ことはあまり起きなくなってきた。
山梨県の一部地域では、それほどまでに「聖地であること」が老若男女問わずさまざまな世代に認知され、生活に溶け込みつつあり、そして地元民は自然にそれを受け入れ、喜び、さらに地元のPRの場として積極的に活用するようになっている。
今回はアニメの聖地に住む、というより今や「生活の中に聖地が散らばっている」状況となった筆者の街の日常を紹介した。それでは、なぜ山梨県が近年漫画・アニメ作品の聖地としてこれほどまでに脚光を浴びることになったのか――それはまた改めて考察していきたい。
<取材・文・撮影/芝海しばうみ 若杉優貴>