うわっ、めんどくさっ…仕事で嫌な相手とうまく付き合うコツ<常見陽平>
③ 気合原理主義の起業家
新規開拓のために、電話をかけまくっていたら遭遇した上野の雑居ビルにあるベンチャー企業。経営者は20代後半くらいだった。いかにも、成り上がり系の臭いがした。
この企業は、経営目標がスゴイ。「1月 気合いを入れる 2月 気合いを入れ直す」など、気合原理主義だ。これが壁に張り出されている。何をやっているのか、よくわからない企業だった。数名の女性スタッフが働いていたが、「彼女たちの働く喜びって」と思わず考えてしまった。
「常見君、何か一緒にやりましょうよ」と連呼するだけで、何をやりたいのかよくわからなかった。名編集者、末井昭氏の「若い奴は何かをやりたい、やりたいというが、やりたい衝動があるだけであって、やりたいことなど何もないのだ」という言葉を思い出した。
と同時に、こういう人が上司じゃなくてよかったなと心底感謝した。自分の上司や先輩はマシだと感じた。当たり前だが、起業家には残念な人もいるということを理解した。
④ ドラマありまくりの、宗教団体の人たち
「お前は、怪しい雰囲気を醸し出しているから、宗教団体を担当しろ」と言われ、事業部内の宗教関連の取引先はすべて私に。いま思うと、顧客をバカにするなという言動だったが。
勧誘こそ受けなかったが、さまざまなドラマがあった。
商談中、ずっと生き方について説教されたこともあった。逆に、合同結婚式などで話題になった団体は、担当者がいい人すぎて、毎回、商談のたびに心が洗われた。
信者ビジネスとは何かということがよくわかった。と、同時に、オンラインサロンなどは私に向いていないんだなと実感した。
⑤ 労働組合に「たちあがれ!」と檄を飛ばされるの巻
左翼なので、労働組合の担当になった。さまざまな労組に訪問した。
ある労組では、「あなたは勤務先に不満はないですか?」と聞かれた。当時の勤務先リクルートは不夜城だった。毎日、終電かタクシーで、灰皿を投げる上司もいるなど、赤裸々に語ったら、「そんな労働環境でいいのですか?」「リクルートには労組はないのですか? たちあがりましょうよ。労組をつくりましょう」と言われた。
当時の私にはそんな勇気などなかった。いまや労組で講演する機会も多い私だが、原点のような体験だった。そうか、怒っていいんだと納得した。
⑥合コンの誘いを受けるの巻
なぜか、かたい金融機関を担当させられた。緊張して訪問したら、担当者は一般職の女性。やや派手めだった。
商談はスルスルと進んで言ったが、初回訪問で突然「合コンをしましょう」と誘われるの巻。やんわりと流したが、実際に行ったら、どうなっていたんだろう。打ち合わせ部屋が狭いこともあり、やや密着感があり、やれやれと思った。
自他ともに認める、モテない、しかも近寄り難い私だが、世の中には異性に飢えている人がいるということを理解した。自分を安売りしてはいけない、とも。
さらには、金融機関はかたいというのはあくまでイメージであって、今でいうパリピ的な人もいるのだと理解した。企業をイメージで決めつけてはいけないのだ。