コロナ禍での「若者の異変」。日本初の“孤独対策”チャット相談で見えた
最も使用されたのは「死」という言葉
こうして全4回の緊急事態宣言発令中の相談で使われた言葉を見ていくと、その言葉の頻出回数に変化があることがわかる。それぞれの緊急事態宣言発令中に、私たちの相談窓口で使われた言葉の使用頻度順位をみてみると、「死」については、1回目の緊急事態宣言下では7番目に多く使われた言葉だった。
しかし2回目の緊急事態宣言下では最も多く使われた言葉になっている。繰り返しになるが、コロナ禍が進行するにつれて、人の悩みや苦しみが重層化し連鎖的に作用することで、「自ら命を絶ちたい」という思いを抱く人が増えていったとみられる。
緊急事態宣言が発令されるたびに使用頻度が高まっていったのは「学校」という言葉だろう。1回目の緊急事態宣言下では、ほとんど使用されなかった「学校」という言葉が、2回目の緊急事態宣言下では10番目、3回目では8番目、4回目では2番目に多く使われた言葉だった。
「学校」という言葉が含まれる相談の内容を見てみると、「学校がいまオンライン授業になっていて修学旅行も延期になるか不安です」や「コロナの濃厚接触者になったため今日を含め10日間は学校を休まないといけない」などコロナ禍の影響を色濃く反映する相談ばかりだった。また例年とは異なるイレギュラーな学校日程により、精神にも体調的にも不調をきたした子どもからの相談も数多く寄せられた。
経済的不安がもたらす影響
そのほかにも「お金」という言葉も3回目から4回目の緊急事態宣言にかけて、頻繁に使われるようになった。経済的な不安を抱えている人からの相談がほとんどで、「お金がなくなってメンタルがガタ崩れになり1年以上戻らない」「毎日お金の不安から、子どもに対して当たってしまう」といった話もある。
経済的な余裕は心の余裕にも密接に関係している。実際、私たちの相談窓口を訪れる人の中で、最も慢性的に孤独感を感じているのは「生活・お金」について相談してくる人だ。生活・お金について相談してくる人の約53%が常に孤独を感じていた。
職業別に見ると「無職」が最も孤独を抱えており、実に60.2%が常に孤独を感じていると答えた。また孤独のみならず、「消えてしまいたいという気持ち(希死念慮)」と「いますぐ死にたいという気持ち(自殺念慮)」についても、「無職」がこれらを最も強く抱いていた。これらのことから、経済的な不安を抱える人への支援は、孤独感の軽減や自殺防止にも効果を発揮する可能性がある点への示唆を得られる。
<TEXT/NPO法人あなたのいばしょ理事長 大空幸星>