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事業価値を失った「西武・そごう」売却。セブン&アイの決断は必然だったか

ビジネス

 2022年2月21日、セブン&アイ・ホールディングスによる西武百貨店とそごう売却の1次入札が締め切られました。ローン・スター、フォートレス、ブラックストーン、GICと世界有数の投資ファンドが2次入札に進んだと報じられています。

セブン&アイ

画像はイメージです

 セブン&アイは2022年2月期の売上高に当たる営業収益を前期比51.2%増の8兆7220億円と予想しています。新型コロナウイルス感染拡大で2021年2月期の営業収益は13.2%減となりましたが、そこから大幅に回復する見込みです。なぜ、このタイミングで百貨店事業の売却へと踏み切ったのでしょうか?

コロナ前の勢いが今や昔…

 セブン&アイは営業収益こそ大幅に改善しましたが、2022年2月期の営業利益は4000億円を見込んでおり、前期比9.2%増ではあるものの、コロナ前の勢いを失いました。

セブン&アイ

営業収益と営業利益 ※決算短信より筆者作成(以下同じ)

 2018年2月期から2021年2月期まで営業利益率6%以上を維持していました。2021年2月期は6.4%です。しかし、2022年2月期は4.6%を予想しており、2.0ポイント低下しています

営業利益率1%未満の百貨店事業

セブン&アイ

セブン&アイ・ホールディングス業績推移(単位:億円)

 利益を抑え込んでいるのが百貨店事業です。2021年2月期の百貨店事業の営業収益は26.4%減の4251億円、62億円の営業損失を計上しました。一方、国内コンビニ事業の営業収益は前期比5.2%減の9208億円、営業利益は8.7%減の2342億円でした。やや落ち込んではいるものの、国内コンビニ事業の営業利益率は25.4%と極めて良好です。

 百貨店事業はコロナで一時的に赤字に陥ったのではないか、とも思えますが、コロナ前の2020年2月期の営業利益率はわずか0.1%。長らく“お荷物”になっていた事業でした

セブン&アイ

事業別営業利益率 ※決算短信より筆者作成

 セブン&アイはイトーヨーカ堂やヨークベニマル、サンエーなどのスーパーも展開しています。スーパーマーケット事業の営業利益率も1.1~1.2%と低い傾向にあります。しかし、この水準はスーパー業界の平均的なものであり、セブン&アイが突出して悪いわけではありません。スーパーは物流インフラの安定や仕入れ価格低減を図るための重要な事業です。

 百貨店は本業とのシナジー効果が薄く、コロナによる新常態からの回復が遅いと見て、切り離しを決めたと考えられます

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