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個人ブランドが在庫の山に…「副業失敗」から学んだ成功の秘訣は?

コラム

 工藤さんが作るシャツの価格は1万5000円、ジャケットは4万円、ズボンは2万円で、ジュエリーデザイナーとコラボする企画も持ち上がったそうです。

「ジュエリーデザイナーにTシャツに合うブレスレットやピアスを作ってもらうことになりました。デザイナーは、ネット販売だけでなく、代官山にある靴屋の一角に小さなリアルショップをオープンしていました。ネットでもリアルでも販売し、決まった日時に店舗に出て、顧客たちを直に接客して、ファンを増やしていました。

 デザイナーからネットだけで販売したらすぐに失敗すると忠告されましたが、でも僕は初年度で100万円ぐらいの売上を上げていたので、デザイナーの忠告を受け流していました」

アパレルで成功するのは至難の業

アパレル在庫

 やがてデザイナーのアドバイス通りのことが起こり、工藤さんはアパレル業界で副業を成功させるのは至難の技と気づくのです。

「2年目の半ばぐらいから、売上がどんどん下がっていきました。インスタでアップするとすぐに注文があったのに、1か月以上経っても売れ残ってしまうのがほとんど。3年目に突入すると在庫が山のようになったので、ついに断念することになったのです

 失敗の原因は、顧客サービスを怠っていたことだと工藤さん。メルマガ発行や会員の特典割引など、ビジネスとして成功させるための努力をまったくしなかったそうです。

「インスタでアップすればすぐに売れた時期が長く続くと思い込んでいた自分が甘かった」と、反省する工藤さん。

「ジュエリーアーティストのように、完全に独立開業して、リアルショップでも販売すれば、ビジネスとして成功したかもしれません。サラリーマンとして安定した生活をしながら、副業でも儲けたかったのですが…

 でも工藤さんに限らず、アパレルで副業として成功させるには、大きな壁を越えなければならないことがわかったそうです。

「アパレル業界に詳しい人が、ヨーロッパではインスタで成功している人がいるけど、日本では個人で大量生産できないため、細々と売るしかないと言っています。ヨーロッパと違って、日本はアパレルの流通過程が組織に限定されているので、個人での成功は難しいとか

 日本では流通の壁が、副業だけでなく、個人事業主の成功を阻んでいるようでした。

<TEXT/夏目かをる イラスト/超ズボン>

コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。『週刊朝日』『日刊ゲンダイ』「DANRO」「現代ビジネス」などで執筆。
Twitter:@7moonr

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