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五輪で世界が注目!「食品サンプル」会社の女性社長に聞く、変遷とこれから

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 2021年夏、東京五輪で来日した外国人記者による、食品サンプルを絶賛する投稿が話題となった。本物の料理そのままのビジュアルに、細部まで再現した繊細な技術。さかのぼれば大正時代には存在したとされる食品サンプルだが、実は海外には無い日本特有の文化だという。

食品サンプル

株式会社デザインポケットの店舗外観

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 最近では当たり前となりつつある、サンプルを用いたアクセサリーや雑貨、制作キットや体験教室。「飲食店に陳列されている模型」だったサンプルを、よりポップなものへと昇華させたのが大阪・道具屋筋の一角にある株式会社デザインポケットだ。今回は、同社の代表取締役を務める倉橋幸子さんに、食品サンプルの変遷とこれからを聞いた。

アジア中心に広がりつつある食品サンプル

――五輪で日本の食品サンプルが話題となりましたが、日本以外にはあまり無い文化なのでしょうか。

倉橋幸子(以下、倉橋):ヨーロッパ圏だと、飲食店のメニューは文字だけのシンプルな場合がほとんど。食品サンプルがあれば、その料理の味つけ、入っている食材やボリュームなどが一目で分かります。また、指すだけでオーダーできるのは言語を超えた画期的なシステムですよね。

――海外からのオーダーが入ることも多いとか。食品サンプルは国外ではどう受け入れられていると思いますか?

倉橋:日本人が海外で飲食店を開いたり、来日した人が自国で広めたり、すでに中国や台湾、韓国など、アジアを中心に浸透しつつあります。例えば、インドの日本企業から「カレーパン」のオーダーが800個入ったことがあります。インドではカレーパンの知名度が低く、ピロシキと間違うパターンも。パンを半分に割った状態の食品サンプルを設置したら中身がわかりやすく、大反響だったとか。

 タイではかなりサンプル文化が進んでいて「サイアム・パラゴン」という大手百貨店では日本と同じく飲食店に「食品サンプルを置かないとオープンしてはいけない」いうルールが設けられているほど。私が視察した際には、工場も2~3箇所できていました。

 また、独自の進化をしているのも面白いですね。日本の場合、お刺身やお寿司など生ものを表現したり、食材を並べる文化があるため繊細な表現ができる「軟質塩化ビニール」を使用することが多いんです。タイにはそのような文化がないので、タイ料理を表現しやすい、硬くて強いレジン素材を使用しています。

食品サンプルに携わるきっかけは

食品サンプル

デザインポケット代表の倉橋幸子さん

――創業時は飲食店向けのデザイン事務所だったそうですが、今のように食品サンプルに携わり始めたのはどのようなきっかけがあったのでしょう。

倉橋:事務所を始めた2007年頃、とあるクライアントさんから「食品サンプルを作りたい」という依頼がありました。食品の手配や写真撮影、工場とのやり取りなど仲介として関わるうち、次第に食品サンプルの魅力にのめりこんでいくように。

 当時はビザの緩和も行われていなかったこともあり、インバウンド客も少なめでした。さらに、日本以外では食品サンプルが浸透しておらず、知名度もまだまだ低かったと記憶しています。

 時を同じくして、技術の発達で印刷物が安価で刷れるようになりました。数十円で刷れるメニュー表と比べると、やはり食品サンプルは高価ですよね。段々とサンプルのオーダーも減り、多くの職人さんや会社が引退を考え始めるほどの影響がありました。

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