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五輪で世界が注目!「食品サンプル」会社の女性社長に聞く、変遷とこれから

ビジネス

業界の低迷期に「えび天」キーホルダーで

――業界全体で低迷期にあったわけですね。そんな時期に参入したのはなぜでしょうか。

倉橋:その頃にはもう、私はどっぷりと食品サンプルにはまっていて。ちょうど「えび天」のパーツがあったので、ストラップにして携帯につけていたところ、予想外に大受けしました。その頃はまだ食品サンプルをアクセサリーにする発想もなかったので「何それ?」「ほしい!」と大反響。「これはもしかしたら一般向けに作ってみてもいい」と思ったのが、現在のベースになっています。

 そして、お世話になっている道具屋筋の看板屋さんにも販売を勧められたことをきっかけに、日曜限定の催事販売をスタート。当時はタタミ1畳ほどのスペースでまだストラップとマグネットくらいしかラインナップがありませんでしたが、毎回3時間ほどで完売。2011年頃、店舗の2階が空くということでお店を構えることになりました。

食品サンプル

食品サンプルのえび天キーホルダー

――食品サンプルをグッズ化した先駆けだったんですね。サンプルといえばやはり飲食店向けのイメージがあるのですが、最初から一般のお客さんに向けて販売していたんですか?

倉橋:うちの場合は、始めから一般のお客さんを対象にし、体験教室も同時に始めました。逆に、店舗用の商品を扱いはじめたのは現在の店舗に移転してから。移転後はお客さまが3倍ほどに増加。2か月ほどで商品がからっぽになるという異例の事態になりました。

サンプル業界が抱えていた課題とは

食品サンプル

クリエイターズスクールの授業風景

――「デザインポケット食品サンプルクリエイターズスクール」という学校も運営していますが、これはどのような経緯があったのでしょう。

倉橋:商品が尽きたことをきっかけに、全国の会社を巡ることにしたんです。そこで、サンプル業界が抱えている現状を知ります。訪ねる会社や職人さんのほとんどが70代を越えていました。当然人手も足りず、1人で切り盛りしているお店も少なくありません。

 この業界は、昔ながらの「見て学ぶ」スタイルで育った方が多く、きちんとした研修制度ができていないこともあり……。新人が入ってきても3か月ほどで辞めてしまうというパターンがほとんど。

 私含め、このスタイルは現代に合っていないと感じました。やりたいことがあるのに、実際にできるようになるのは10年後……そうなると我慢できない人がいるのも仕方ない気がします。次第に「10年後、この業界はどうなっているんだろう」という思いが強くなり、「日本食品サンプル普及協会」を立ち上げ学校を作りました。

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