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ブラック出版社を辞めて、海外でオンライン硬筆家になった女性が語る「レールのない人生」

学び

 現在、バルセロナで、書道とオンライン硬筆を教えている田中さとみさん。大学を卒業後、地元の出版社に勤めていたさとみさんの転機は、勤務10年目のときに訪れた。「猿岩石のように世界を旅したい」という夢を叶えたい思いが強くなり、会社に退職願いを出したのだ。

オンライン硬筆

田中さとみさん

 彼女はなぜ、32歳で会社員を辞めて海外へ飛び出したのか。そしてなぜスペインに辿り着き、オンライン硬筆というユニークな事業を始めたのか。その経緯を取材した。

「会社を辞めてお前に何ができる」

「32歳で営業しかやってきてないお前なんかに、辞めて何ができる」。上司からはそう罵られ、精神的にも追い詰められる日々だったと、当時の職場を振り返るさとみさん。

「不安でしたね。地元から出たことがなく、ひとつの業界、同じ会社でしか働いたことがなかったので。27歳で大失恋して5年間、彼氏もできず、ずっと結婚もできないと思っていましたから

 時代が変わり、出版業界も広告主が雑誌からインターネットにシフトし始めたころで、広告が取れなくなってきていた。「田中さんには今までお世話になったから」と義理人情で仕事をもらうことに、むなしさを感じ、危機感を持つようになったという。

「ナミブ砂漠を見たい。英語を勉強したい」

砂漠

※画像はイメージです

 30歳を過ぎたころから「このままでいいのかな」と不安になっていたという。その気持ちを払拭するため、世界遺産に没頭。同時に英語を勉強したい気持ちも高まっていった。「世界を見たい」という欲望を世界遺産検定3級に受かることで発散していた。

「年に1回、上司にお許しをもらって旅行をしていました。ただ、2週間の休みをとるのに、その前の3か月間は休みなしで、めちゃくちゃ働いていましたね。旅行中でも上司からお怒りのメールが送られてくる。今思えば、みんな不満だったんだと思います」

 その頃、ある書店で平積みになっていた『世界の絶景100』を手に取った。ページをめくると、燃えるように赤いナミブ砂漠が見開き一面に載っていた

「このままじゃだめだ。世界を見たい。ナミブ砂漠を見たい。英語を勉強したい。世界中どこにいっても食べていけるようになりたい」と考えるようになったという。

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