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コロナ禍で地方百貨店はテナント撤退の嵐。ワクチン接種会場になる動きも

ビジネス

 新型コロナウイルスの感染拡大により東京都・愛知県・大阪府・福岡県など大都市圏を中心に緊急事態宣言が発令(2021年6月1日時点)されるなか、多くの大手百貨店では「一部フロアや週末の営業休止」をおこなっている。しかし、現時点は「営業を行うことができている地方百貨店」の状況も深刻なものとなっている。

百貨店

丸広百貨店日高店(埼玉県日高市・高麗川駅前)の最終営業日。コロナ禍のなか閉店を発表、今年2月に21年の歴史に幕を下ろした

コロナ禍でテナント撤退相次ぐ百貨店

 コロナ禍で苦境に陥る百貨店業界。大都市圏では多くの大手百貨店が「満足に営業できない状態」となっているものの、コロナ禍によるテナント撤退の影響は地方百貨店のほうが深刻だ

 例えば、多くの百貨店やショッピングセンターを中心に紳士服「J.プレス」「五大陸」や婦人服「組曲」「23区」など約3000店舗を展開していたアパレル大手「オンワードホールディングス」(本社:中央区日本橋、中核会社:オンワード樫山)は、2021年2月期中までに全店の半分近くにあたる約1400店舗を閉店させることを発表。

 同じくアパレル大手の「ワールド」は2022年3月期中までにグループ内の12ブランドを廃止し、ほとんどの店舗を業態転換させることなく閉店させることを発表しているが、こうした大手アパレルによる「店舗整理」の対象となったショップの多くは、もともとの売り上げ規模が小さかった地方百貨店や大都市の地域二番店にあるものだ。

 こうした「アパレル撤退の嵐」が吹き荒れるなか、後継テナントが決まらずに営業規模の縮小を余儀なくされた地方百貨店も多い

百貨店の「改装計画の見直し」も

 例えば、長崎県佐世保市の「佐世保玉屋」(2020年10月改装)は8フロア(物販は6フロア)を3フロア(このほか催事場・屋上遊園地等あり)に、神奈川県横須賀市の「さいか屋横須賀店」(2021年3月改装)は7フロアを5フロアに縮小。フロア丸ごとの閉鎖に至らずとも、山形県酒田市の「マリーン5清水屋」(2021年4月改装、日本百貨店協会未加盟)のように、直営売場の面積を削減したことで大部分が空き床のフロアが生まれてしまった例もみられる。

百貨店

一部が空き床となった佐世保玉屋(長崎県佐世保市、撮影:文鉄・お札とコインの資料館)。かつてあった子供服売場のポップな内装が淋しさを誘う。なお、同店は2028年度までに店舗を建て替える方針を発表している

 さらに、コロナ禍によって改装・リニューアル計画を変更せざるを得なくなった店舗も少なくない。

 その1つが、青森県八戸市の中心部にある百貨店「三春屋」だ。かつて流通大手「ダイエー」と資本業務提携を結んでいた同店は2019年11月に大手不動産会社「やまき」(本社:東京都港区)の傘下となり、運営企業の交代に合わせて2020年中のリニューアルを計画。そのなかの目玉とされたのが、コミュニティスペース「三春屋Myサロン(仮称)」だった。

 この「三春屋Myサロン」は、同店の会員などを対象としてライブレストランやカラオケルーム、フィットネスジム、図書室などの特別サービスを提供する計画で、百貨店業界では「地方百貨店の攻めた取り組み」として話題を呼んでいた。

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かつてダイエー(イオン)と提携していた「三春屋百貨店」(青森県八戸市)。経営者の交代により「交流サロン」を目玉としたリニューアルを計画しているが…

 Myサロンの設置に伴い同店5階の大部分は2019年末には空き床に。あとは工事を待つだけだったという。

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