「同期のブラマヨ、チュートには到底及ばなかった」元吉本芸人の放送作家が持つ“バランス感覚” | bizSPA!フレッシュ

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「同期のブラマヨ、チュートには到底及ばなかった」元吉本芸人の放送作家が持つ“バランス感覚”

 放送作家、吉本NSCで講師をつとめる桝本壮志さん(45・@soushihirosho)が、初の小説『三人』(文藝春秋)を書き上げた。かつては自らも芸人として活動しており、同期である「チュートリアル」の徳井義実さん、「スピードワゴン」の小沢一敬さんとは、あまりの仲の良さから3人でシェアハウスに住んでいたことも。そのかけがえのない体験を基に、今回の作品も“シェアハウスで暮らす芸人2名と放送作家1名”を主人公にした青春物語となった。

桝本壮志さん

桝本壮志さん

 いまでは数多くのコンテンツに携わる桝本さんだが、芸人時代、そして駆け出しの放送作家時代はうだつが上がらず、先が見えない毎日を送ってきた。そんな中で見つけた“社会との接点”とは?

「作品を世に発表したい」と思わせた周囲の存在

――小説を書き始めようと思ったのは何がきっかけだったんですか?

桝本壮志(以下:桝本):大きくは3つありまして、まずは私が『笑っていいとも!』の構成作家をしていたとき。テレフォンショッキングに、小説家の百田尚樹さんがいらっしゃったんですね。あの方は『探偵!ナイトスクープ』などを手掛けていた元放送作家なんですが、タモリさんに「僕らが書いている番組台本って、どんどん捨てられていくんですよ。自分自身の文章を、世の中のいろんな人に見てほしいと思ったんです」と書き始めた理由を語っていて。それを裏で見ていてグサッと心に刺さりまして、「自分も書いたものを人の目にさらしてみたい」と、渇望するようになったんです。

 もうひとつは、又吉くん(ピース)ですかね。彼とは春夏秋冬と、1年に4回ほど2人でデートするルーティンがあるんです(笑)。まだ向こうが18歳ぐらいのときから知っていて、芥川賞を獲って羽ばたく姿も見てきました。そんな彼から「桝本さんも書いたらどうですか?」と後押しされたんです。

 最後は、親友・小沢くんの何気ないひとこと。彼が「俺、パンクバンドの最初のアルバムが好きでさ。なぜかって、人生の自叙伝になっているから。1作目でしか書けないことってあるんだよね」と言ったんですね。別に僕はバンドマンじゃないんですが(笑)、すごく納得する部分があって。それまで細々と書いていたものを一切捨てて、『三人』のベースとなる物語を書き始めました。

西成のバイト先で約1週間軟禁

桝本壮志さん

――桝本さんはもともと吉本興業で芸人をしていましたが、なぜ「書く」ほうにシフトしていったんですか。

桝本:僕が入った年は「華の大阪13期」と呼ばれていまして。同期がブラマヨ、チュートリアル、野性爆弾、次長課長……M-1チャンピオンが2組もいるほどハイレベルだったんです。18歳で広島の片田舎から、それなりの自信を持って出てきたんですが、「表現者」「話し手」として到底及ばないことに気づいて、日々諦観していました。

 ただ、芸人をやめる直接的な原因は別にあるんです。当時、大阪・西成の某飲食店でアルバイトをしていたんですが、そこはいまで言う“反社”のような方が経営していたんですね。ある日、店の売上金がなくなりまして、その日に入っていたバイトが全員吊るし上げられまして。僕はそれを知らず、女の子と映画デートして帰宅したら、急に怖い人たちに事務所に連れて行かれて、そこから1週間近くも軟禁。もう完全にアウトなやつです(笑)。

 その間、芸人としての仕事もあったので、うめだ花月の出番を無断で2回飛ばしちゃったんです。当時は携帯とかなかったから、会社からあっさり「はいクビ」と。実績もない若手芸人なんて人権がないような時代ですから、すぐに切られちゃいます。それで「うわ、どうしよう……」と吉本興業の親しい人に相談したら「東京に行ったら?」ということで東京吉本に潜り込ませてもらったんです。

三人

三人

芸人二人と放送作家のシェアハウス。そのリアルな生態を浮かび上がらせながら、青年の痛切な日々を描く、青春小説の新たなる傑作!

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