「希望退職」と「解雇」は法的に何が違う?知らないと損する基礎知識
「整理解雇」は希望退職とは明確な違いが
会社側が人員を削減して経営を維持しようとする手段として「整理解雇」があります。これは制度として希望退職とは「明確な違いがある」と後藤弁護士は言います。
「整理解雇は会社側の経営悪化などにより、従業員を削減する必要が生じたときに、一方的に労働契約を解約することです。希望退職は前述した通り、会社と従業員の合意の上での退職になるのに対し、整理解雇は会社側の一方的な意思表示により、従業員を退職させる点で明確な違いがあります」
整理解雇は違法ではありませんが、会社が勝手な解雇をしないように、厳しく条件が決められています。
一方、希望退職はリストラの一環として募集するので、整理解雇の回避努力のために行われることが多いようです。整理解雇の前段階として希望退職者を募集しているというわけですね。
優秀な社員が希望退職を申し出たら…
例えば成績優秀な社員が希望退職を申し出たとして、会社から「優秀な社員には辞めてほしくない」と引き止められる可能性もあります。雇い主に退職を拒否された従業員の処遇は果たしてどうなるのでしょうか?
「期間の定めがない労働契約(正社員など)ならば、従業員は所定の告知期間を得れば原則として自由に退職できます。民法627条1項では従業員が会社との間で無期の労働契約を締結している場合、従業員が会社に対して退職の申し出をした日から2週間を経過すれば、適法に退職できます。例えば、労働契約書や就業規則に『退職する場合は30日前に告知すること』などと規定があっても、民法627条1項が優先されるため、原則として2週間前に告知さえすれば、法律上は辞めることができます」
つまり、どんなに会社が引き止めても、またどんな退職理由であっても、辞める自由はあるわけです。
とはいえ、仕事の引き継ぎなどもあるので、退社の意思はある程度の余裕をもって申し出てたほうがいいでしょう。
景気が不安定なコロナ下において、自分の身を守るため、労働関連の法律を知っておいて損はありません。
<TEXT/林加奈>