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累計1730万部、敏腕ジャンプ編集者が明かす『チェンソーマン』『SPY×FAMILY』ヒットの裏側

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 現在、ヒット作を続々と世に放つ驚異の漫画編集者がいる。マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」の編集者である、林士平氏だ。

林士平

「少年ジャンプ+」編集・林士平氏

 彼が連載立ち上げから担当している『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)、『チェンソーマン』(藤本タツキ)は、それぞれ累計発行部数800万部、930万部を突破し、2020年版、2021年版の宝島社「このマンガがすごい!」オトコ編1位を獲得するなど、その注目度はうなぎ上りだ。

敏腕『ジャンプ』編集者が語る“人気作の裏側”

 そんな人気作品を支えるヒットメーカー林氏に“ヒットの秘訣”を聞いた。

「遠藤さんも藤本さんも、前の作品は雰囲気が暗かったんです。個人的には好きな作風だったんですが、幅広い読者層に訴えるなら明るいもののほうが闘いやすいし、そちらに進んだ2人の作品も見てみたい。

 遠藤さんには『次は明るいものをやりましょう!』とダイレクトにお話しして、スパイと殺し屋がお互いの素性を隠して夫婦生活を送る、というコメディ色の強い企画を立ち上げてもらいました。

 その夫婦が、アーニャという幼女を養子に迎え入れて3人家族になる、という構造が発明的なんですよ。周囲にはまだバレていないけれども、アーニャは人の心が読めるという超能力を持っている。二者間で正体がバレる・バレないのサスペンスやコメディって山ほどありますけど、三すくみは聞かないと思うんです

主人公の明るさが作品を広い場所に連れていってくれた

林士平

 一方、藤本タツキ氏の独特な世界観には、どのように明るさを取り入れることが可能になったのだろうか。

「事前の勝算はなかったんですが、ウェブでデビューした藤本さんが初めて本誌でトライする機会だったこともあり、一緒にジャンプの古い漫画を読み直して、感想を言い合ってみた打ち合わせがありました。

 その過程で、そういえば性的欲求をモチベーションにしているキャラクターって、昔はいたけれど最近はいなくなったよね、と。『ジャングルの王者ターちゃん』や『まじかる☆タルるートくん』の流れを汲んだ主人公像を作れば、新しいし面白いものになるんじゃないかな、とお互いが気づいていった。

『チェンソーマン』の主人公のデンジは“女のコの胸が揉みたい!”という欲望を成就させるために、地獄のような闘いに足を踏み入れていく。デンジのからっとした明るさが、この作品を広い場所に連れていってくれたと思います」

チェンソーマン

チェンソーマン

デビルハンターのデンジは上司の「胸を揉む!!」という欲望を胸に、チェンソーマンに変身して悪魔を倒す。第1部は全11巻完結。アニメ化決定&第2部の連載準備中

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