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大反対されたブランドが300億円規模に。アパレル苦境のなか「バロック」代表に聞く闘い方

ビジネス

大反対を押し切ったブランドが300億円規模に

「さらにファストファッションの波も来ていたのを受け、MOUSSYよりもリーズナブルで、幅広い層にアプローチできるカジュアルなブランドを新たに創ることが急務だと感じました」

 そうして誕生したのが「AZUL BY MOUSSY」だ。MOUSSYがファッションビルや駅ビル中心に展開してきたのに対し、AZUL BY MOUSSYは20代の若年層からファミリー層が集まるショッピングセンター(SC)への出店を主とするブランドとしてスタートさせたのである。しかし、ブランドローンチまでには多くの反対意見が飛び交ったそうだ。

バロック

「『MOUSSYで創り上げてきたブランド価値が毀損してしまう』『価格帯を下げてしまえば、MOUSSYファンが離れる』といった否定の声が社内から多く上がり、ほとんどの役員から猛反対を受けたんですよ。

 ただ、今後のファッショントレンドやライフスタイルの変化が必ず来ることをきちんと説明していき、AZUL BY MOUSSYを市場に出すことができた。結果的に、当時の年間売り上げで見ると、MOUSSYが160億から110億へ目減りしたのに対し、AZUL BY MOUSSYは300億円と、バロックを代表するブランドへと成長したんですね

歴史から学び、先回りして考える

 村井氏のビジネス哲学の中に「歴史から学ぶ」というのがあり、常に過去の人類が歩んできた歴史を紐解いてヒントを得ているという。

「“歴史は繰り返す”とよく言われていますが、例えば戦争の歴史で考えても古くは宗教を巡る争いが勃発し、近代史に至っては2度の世界大戦が起きた。また、現在の新型コロナに関しても疫病との戦いは、過去にもペスト(黒死病)やスペイン風邪などが大流行しました。

 時代は違えど、歴史を振り返れば同じようなことが起きていて、何か大きな有事が発生すれば世の中の大転換期が訪れる。リーマン・ショック後の経済の急速な落ち込みは先回りして考えていたため、カジュアル路線強化の先手を打つことができたんです」

 また、村井氏は「一度既存の常識が壊れても、また新たな文化が生まれるのがファッションの面白さ」とも言う。

「激動に動く歴史の中で、新しいファッションが生まれては消え、そしてまた違った形で復活する。いつの時代でも、人のライフスタイルに寄り添えるアパレルだからこそ、ビジネスとしてやりがいも生まれますし、その普遍的な価値は国境をも越える。バロックは企業理念に『挑戦』を掲げていますが、どんな困難が来ようとも新しい風を吹き込む担い手として、ファッションカルチャーを牽引する気概を持って尽力してきました」

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