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リスカ傷跡が手首に今も…20代「墨出し職人」の壮絶人生

学び

 少子高齢化により、日本全体で「人手不足」が叫ばれる昨今。なかでも特に若い働き手が不足しているのが、「建築系」の業界。そんな業界に、高校卒業から間もなく入ったという山口祐樹さん(仮名・24歳)

建築系

建築系で「墨出し」の仕事を行う、山口祐樹さん(仮名・24歳)

 山口さんは父親が建築系の会社を経営しており、母親の勧めもあって就職したそう。通信高校に通っていたため、在学中から今の仕事で働き始め、月25万円以上稼いでいた。しかし、特にやりたいことがあったわけではなく、興味本位で選んだという。

「墨出し」という超専門職で働く

 山口さんが就いた職は、建築系の中でもかなりの専門職である「墨出し」という仕事だった

「簡単に言うと大工と設計の中間にあたる仕事で、国家資格が必要な『測量士』に近いです。設計屋が作った図面を実際の現場に行って書き出し、道路から設計する所有地の距離や角度、寄りを確かめ、実際に建築する大工が作業しやすいよう水平垂直を調整する作業をします」

 最近だと小学校のトラックの幅とアールを最適なものか確かめ、きれいな円になるよう調整する作業を行ったとのこと。専門性が高く、安定した仕事だ。実際、「職人」と呼ばれる人たちの中では、かなりハイレベルな仕事に分類され、未経験でも月に30万円後半は余裕で稼げるそう。しかし、将来性という面では不安もややあるという――。

「やろうと思えば大工だけで測量はできますし、最近だとレーザー機器を使って水平垂直が図れるので、仕事が減っているのを実感します。技能も専門的過ぎてほかに生かせないですし、将来性という意味では不安がありますね。そのためか、同業他社を含めても若い働き手がほぼいません」

「O型だからダメなんだ!」と怒られ…

建築

※イメージです(以下同じ)

 もともと「職人はデスクワークの野外版」くらいの認識しかもっていなかった山口さんだが、その違いにすぐ気づかされた。

「まず、これだけ専門的な仕事にもかかわらず、指導や研修が一切ないんですよね。親父が70歳近い高齢だからかもしれませんが、あくまで『見て学べ』という姿勢。それでも専門用語から仕事のやり方までを必死に見て、調べ、勉強しました。しかし、少しでも質問すると『それぐらいどうして分からないんだ!』とキレられ、ツラくなっていきました」

 それだけならまだしも、信じられないような指導をされることもあったという。

「親父には常に怒られ続けていたのですが、しまいには『これだからO型はダメなんだ!』と、O型に生まれたことを責められました。自分の息子なのに……。他にも、声が小さければ『やる気が足らない』、質問すると『仕事ができないやつが口を挟むな』という感じ。毎日泣きそうになりながら仕事してました」

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