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冷徹なる虎・南原竜樹社長が“無気力な若者”に吠える!「たいていのヤツラは甘えてる」

ビジネス

 一世を風靡した人気番組『マネーの虎』(日本テレビ)。夢や目標を描いて起業を志す者たちのプレゼンを聞き、目の前に札束を積み上げた“虎”と呼ばれる社長たちが自腹で出資するといういまだ語り継がれる伝説的な番組である。

 番組にはさまざまな社長が登場したが、なかでも“冷徹な虎”と呼ばれ、強烈なインパクトを残したのが現在、株式会社LUFTホールディングスの代表取締役社長を務める南原竜樹氏だ

南原竜樹

’60年、岡山県生まれ。LUFTホールディングス代表取締役。年商100億円から負債100億円に転落した後、復活を果たす。著書に『借金100億円からの脱出』(河出書房新社)ほか

 一時期は自動車の輸入業で100億円超の売り上げを計上するも、2005年には数十億円もの負債を抱えてたった1日で無一文に。しかし、現在では復活を遂げ、年商116億円を超えるグループ企業のトップとして活躍している。

 転げ落ちた先でふたたび這い上がった経験を持つ南原氏だが、昨今“気力がない”“将来を悲観している”といわれがちな若者に対して何を思うのか。

昔の方が根性を持つヤツがいっぱいいた

――南原さんが起業された当時の思い出から、お聞かせください。

南原竜樹(以下、南原):会社を登記したのは1988年だけど、実は大学時代に行った海外旅行をきっかけにそのまま起業したんだよね。当時は、ケンメリやハコスカとかスカイラインにみんなが憧れた時代だったんだけど、国内のディーラーから買うとすごく高かったんだよね。

 だからオレは自分で海外に出向いて、そういう車を円高差益で安く輸入して、日本人にできるだけ適正価格で買ってもらうようにして商売していたんだよ。

――今でこそ起業やフリーランスという言葉もよく見聞きしますが、当時では珍しかったんじゃないですか?

南原:そのころの時代っていうのはさ、起業とかベンチャーっていう言葉もなかったんだよね。“一億総就職”が当たり前で、男は家計を助けて女は家庭を守るのが当然だから、もうちょっとさかのぼると、小学校の頃なんかも、40人の教室で親が共働きしている友だちも3人ぐらいしかいない環境だったね。

南原竜樹

――そこから20年近く事業を手がけてきたものの、一度、高級車メーカーのMGローバーが破綻したことで数十億円もの負債を抱えたと伺いました。社員もいなくなり、自分1人になったという当時のことは覚えてらっしゃいますか?

南原:いちばん覚えているのは、六本木の森ビルで守衛に怒られたことかな。MGローバーが倒産して、銀行からの融資がいきなり受けられなくなったんだよね。

 オフィスのイスやデスクから何から何まで、自分で売った。財布に数百円しかないときに六本木ヒルズ敷地内の公園のベンチにスーツ姿のまま寝ていたら、守衛に「ここは森ビルの私有地だ」って言われて追い出されたんだよ。偉そうな態度だったから「こいつ、馬鹿野郎!」と思ったのは忘れられないね。

――南原さんの経歴をたどると、MGローバーの煽りを受けた年末にはすでにレンタカー事業を展開されていたりと、いわゆる“再起”までの歩みが早いような印象も受けます。その原動力はどこにあったんでしょうか?

南原:よく「モチベーションは?」とか「原動力は?」と聞かれるけどさ、実際にはないんだよね。いつもこんな風に淡々としているから、目の前のやるべきことをただ進めているだけで。

 MGローバーが倒産したときも翌日にやることがなくなったわけではなくて、例えば、田園調布のショールームやそこで働く従業員の受け入れ先を探したり、負債をどうやって整理していくかを考えたりさ。まわりの物事が継続して動いてる先で、今につながっているのが実際のところかな。

親世代にも責任? 現代の若者は「甘えられる環境」

――南原さんが起業した当時と、現代の若者にみられる違いはありますか?

南原:昔の方が根性を持ったヤツがいっぱいいたと思うね。仕事でいえば、今は何かあるたびに「やめたい」とか「労基に訴えてやる!」みたいな声もよく目にするし。

 昔はさ、例えば車のディーラーの前を深夜に通ると電気がまだ点いていたりね。冷やかしで見に行ってみると「あと今月何台売らないといかん!」みたいな叱咤(しった)が飛んでるんだよ。若者はその見返りとして、昇進が約束されていたし、物欲もあっただろうからみんなが頑張っていた時代だったんだろうね。

――ちなみに、南原さんが思う若者のイメージっていくつくらいですか?

南原:20歳くらいがギリギリかな。25歳になったらもう立派な大人だよね。ただ、今の25歳くらいは頼りないヤツもいっぱいいる。でも今オレがいっしょに仕事しているのは20歳だよ!? 中国で資本金8億円の会社を作って、月の利益を4000万円も売り上げている。ビックリするくらい達者な物言いをするし、考え方もしっかりしてるヤツでね。

南原竜樹

――その方といわゆる“気力がない”“将来に悲観的”といわれがちな現代の若者には、どういった違いがあると思いますか?

南原:たぶん、たいていのヤツらは甘えてるんだよね。さっきのヤツなんて、10代の頃に父親が家出したんで、おふくろと妹のためにとエンジニアになって食わせていたんだよ。

 苦労を買って出ろという言葉もあるけど、いつまでも実家にずっと住んでいたりとかさ、楽なほうばかりを選んでるじゃないかな。オレなんて嫌なほうばかりを選んでるから。でも、自分の中には“事業欲”があるからトラブルが起きても耐えられる。何となく甘えられる環境があるから、はなっから辛いことをしようとしないんじゃないかな。

――甘えられる環境というのは、ある意味では若者の親世代がそもそも与えているのも引き金になっているように思えるのですが、その点についてはいかがですか?

南原:親世代の責任もあると思うよ、絶対に。今の親はさ、子どもの頭を引っ叩いたりしないじゃない。虐待はもちろん駄目だけど、ある程度は口でいってもわからないならビシっと叩いたりは必要だよね。

 オレが子どもの頃は、学校で先生に殴られて帰ってきたら、親父が「お前が悪いから殴られたんだろ」とさらに同じ箇所にもう一発喰らうような時代だった。運動会で手を繋いでゴールするっていう話もあるけど、資本主義なんだから競争があってこそでしょ。「いつから日本は共産主義になったの?」と思うよね。

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