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餃子の王将、コロナ外食不況でも健闘している理由

ビジネス

テイクアウト・デリバリー強化とキャッシュレス

⑤ テイクアウト・デリバリー強化及び決済方法の多様化
・直営全店にてキャッシュレス決済が可能に
・軽減税率が適用されるテイクアウトとデリバリーサービスの強化
テイクアウト:「EPARKテイクアウト」を直営全店に導入済
デリバリー:「出前館」「Uber Eats」と併せて計74店舗にデリバリーサービスを拡大

⑥ 新たな市場開拓と店舗への再投資
・2019年6月に新業態1号店となる「餃子の王将Express アトレ秋葉原店」を開店
・店舗の老朽化、陳腐化を防止するため店舗の改装・補修を積極的に推進
・海外展開…2019年4月に台湾3号店となる「餃子の王将 台北統一時代店」を開店

⑦ CSRの重視
・2019年7月より全店舗でプラスチック製のストローとお持ち帰り用スプーンを廃止
・生分解性樹脂のストローとバイオマスプラのお持ち帰り用スプーンへ切替
・継続的に被災地支援の取組みを実施
(2011年に東日本大震災による被災地支援を目的に「野菜煮込みラーメン」の売上の一部を寄付)

(以上、「株式会社王将フードサービス(9936)2020年3月期 決算短信」より筆者要約)
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 通常、決算短信では細かな施策の説明を行わず、結果(数値)を淡々と記載することが多いです。しかし、王将フードサービスは、決算短信内で細かな施策まで記載しています。原文では上記の施策説明のみで1ページ半を割いています。つまり、以前執筆したカレーハウスCoCo壱番屋を運営する「壱番屋」と似た、具体的な施策を積み上げることで、成果に変えている企業と考えられます。

デリバリー需要増で客単価もアップ

 では、新型コロナウイルスの影響が色濃い2020年4月の動向も併せて確認しておきましょう。王将フードサービスでは「決算短信」だけでなく「月次報告」資料も情報量が多く、直近の売上額などの数字情報が手に入りやすかったため、グラフにして整理してみました。

月別売上額推移

図2:月別売上額推移(月次報告より筆者作成)

 まず、売上額については実数値と「昨年同月比」の値を並べました。昨年同月比が100%を上回った場合は、昨年よりも売上額が伸びていて、下回ると売上額が下がっていることを示しています。

 2019年4月~2020年2月の間は100%前後で推移しており、総じて昨年よりも売上を伸ばしている状況ですが、2020年3月には前年比96.5%、4月には76.9%と落ち込みが見られます。しかし、同業他社(飲食業)で同様のデータを見てみると、3月前年比67.7%、4月も前年比36.5%と大きな打撃を受けています。王将フードサービスは「かなり善戦している」と言えるでしょう

王将フードサービス

図3:月別客数推移(月次報告より筆者作成)

 続いて、月別客数推移も比較してみました。こちらも2019年4月~2020年2月の間は100%前後で推移しており、総じて昨年よりも客数を伸ばしています。これは先述したような来店促進施策・キャンペーンの効果と言えるでしょう。

 しかし、2020年3月には前年比93.4%、4月には69.3%と、こちらも同様に落ち込みが見られます。先ほどと同様に同業他社(飲食業)で同様のデータを見てみると、3月前年比68.9%、4月も前年比40.3%と大きな打撃を受けています。客数においても踏みとどまっていると言えそうです。

王将フードサービス

図4:客単価推移(月次報告より筆者作成)

 最後に、客単価推移を確認します。2020年3~4月はむしろ上昇しており、2020年4月においては1062円と4桁を突破。これは「テイクアウト・デリバリーの好調」による影響があると考えられます。簡単に説明します。人気かつ定番メニューの「餃子6個」を例にすると、

店舗:264円(税込)
テイクアウト:260円(税込)
デリバリー:380円(税込)

 店舗・テイクアウトと比べて、デリバリーの価格が120円ほど高いのがわかります。「月次報告」内では手数料額を売上に含んでいるかどうかは特に明記はしていないため、価格変動が単価に影響していることを断定するのは難しいですが、報道や昨今の状況を鑑みるにテイクアウト・デリバリーの売上増加は間違いないでしょう。

 つまり外出自粛に伴って客数は減ったものの、出前館やUberEats経由でのデリバリー・テイクアウトの利用率が増えた結果、売上減の抑止に成功し、好調な決算をたたき出したといえるでしょう。

口コミサイトからみえる現場の声

王将フードサービス

餃子の王将の口コミトップ(openworkより引用)

 さて、働く側としてはどうでしょうか。実際に働いた時の所感を把握するために、口コミサイトを確認していきましょう。各種口コミサイトは転職支援事業をビジネスにしており、各企業がクライアントにもなっている関係上、著しい悪評は公開されないようになっています。その制約を踏まえて、現場の声を確認していきます。

良い点:
・固定ファンがいて、その声が励みになる
・店長やエリアマネージャーを目指しやすい
・同業他社と比べて給与水準が高い(有価証券報告書より平均年収509万円/平均年齢34.5歳。業界平均は294万円)

気になる点:
・休みがとりにくい
・体力/筋力を求められる業務が多く、女性は不利になることがある
・評価の納得感がやや弱い

 現場の裁量が大きい分、とにかく忙しいことが伝わる口コミでした。出店スピードは同業他社と比べても抑え目である(2019年4月に729店舗→2020年4月に733店舗と、1年間で4店舗しか増えていない)ため、1店舗あたりの業務量がそもそも多いのだと考えられます。

 味を好む古くからのファンが多く、それを現場のスタッフが心の支えにしていることがうかがえる一方で、店長・エリアマネージャー以上の評価基準が不明瞭で「働いた分評価されているかわからない」という声が散見されました。

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