JR東日本、コロナ禍でも揺るがない「IT・Suica事業」のスゴさ
テレワークの浸透で輸送量が減少する?
輸送量自体はゆるやかに上昇傾向がみられました。主力は「在来線の定期券使用者」(グラフの黄色部分)であり、山手線や埼京線などの在来線を使う通勤・通学客が輸送量の大半を占めていることがわかります。
したがって、テレワークやインライン授業の浸透によって、通勤客・通学客も減少した場合、輸送量が大きく減少トレンドに転じる可能性は十分にあり得ます。
続いて、運輸収入の状況を確認します。すると「在来線の定期外使用」および「新幹線の定期外使用」が収入のメインであることがわかります。
つまり、運輸収入に影響を与えるのは通勤・通学ではなく、定期券エリア以外への外出・旅行などの増減がメインであると言えます。
こちらは外出・旅行の自粛傾向が続く限りにおいては回復の見通しが立たない部分であるので(定期券は会社が交通費を負担する限りにおいては、従業員が実際に使わなくても購入されます)、現状と同レベルの外出自粛が続く限りにおいて「運輸収入の減少は避けられない」情勢です。
JR東日本「改革2027」の3つの重要ポイント
では、JR東日本はこのまま手をこまねいて見ているだけなのでしょうか? JR東日本が進めている改革プランである「改革 2027」に触れつつ、その点について解説を加えていきます。
「改革 2027 」の基本方針として、下記3つが掲げられています。
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■「鉄道のインフラ等を起点としたサービス提供」から「ヒト(すべての人)の生活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値の提供」へと「価値創造ストーリー」を転換
■ 鉄道を中心とした輸送サービスを質的に変革し、進化・成長させていく
■ 生活サービス事業及びIT・Suica事業に経営資源を重点的に振り向け、新たな「成長エンジン」としていく
(「改革 2027」p.2-1・2-2より筆者抜粋 )
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この中で、最後で「IT・Suica事業に経営資源を重点的に振り向け」と明言されているところが良いと思いました。というのも、Suicaは駅から離れたところでも使えるシステムであり、ここを強化することによって輸送量の減少にも対応できる事業体制が作れるようになるからです。