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人工知能の暴走を描く、入江悠監督「研究者は優しい人が多かった」

10年後はますます管理される社会に

AI崩壊

――AIの普及は、本作からも感じられるように、可能性と危険性が裏腹です。監督は改めて、どの辺に怖さを感じていますか?

入江:やはり個人情報、プライバシーの問題に危機感を覚えています。たとえば僕が40年生きてきて蓄積してきたものがある。好きな食べ物とか好きな本の分野とか、映画のジャンルとか。

 そういった情報をどんどんどこかの企業が吸い上げて、ほかの企業に転売していく。その情報は、いったい誰の権利なのかとは思います。

 あとは、会社員が外回り中に喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、それがデバイス経由で会社に全部わかっちゃって管理される社会になる。そのときの息苦しさみたいなものはあるだろうなと。

――確かに、全部バレてしまいますね。ひと駅前で降りて、おいしいと評判の店に寄ったり。

入江:管理によって効率化したり、安全性が保たれたりすることはあると思います。ただ、映画館のような暗闇に入ってほっとできる時間とか、誰でもない存在になれる瞬間といったものが、どんどん奪われていくなと。10年後、息苦しくなっていなければいいなと思いますね。

事前に知っている作品しか観に行かない

AI崩壊

――本作はオリジナル脚本です。今の日本でオリジナル脚本によるこうした大作を作り上げるのは大変なイメージがあります。

入江:作り手の問題もありますが、ひとつは観客の問題もあると思います。観客が事前に知っている作品しか観に行かないという流れがある。原作ものなら知っていて安心できるし、実写でどうなったのか確認しにいくけれど、未知のものには飛び込みたくない。

 僕の世代なんかだと、CDのジャケ買いとかしたわけです。子供にとってはCDって結構高いんですが、ジャケットを見た印象だけで買って、どんな音楽と出合えるのか楽しんでいた。それが今はレビューを確かめて、映画で元が取れるかどうかで観に行ったりする。

 その意識が変わって、知らない世界に飛び込むことをみんなが面白がれたら、オリジナル脚本も増えると思うんです。CDも掘り出し物があるとすごく嬉しいのと同じで、映画もよくわからないけど、ふらっと入ってみて面白い作品に出会えたというのが昔はあったと思います。

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