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他人の支援だけで生きていけるのか?「可能性はある」と経済学者が解説

 稼げど稼げど、暮らしはラクにならない時代。もはや自分の力だけで生きていくのは限界が来ているのかもしれない。そんな中「余ったお金や資産を分け合う」「お金があるところから引っ張る」という“他人のお金任せ”な新潮流が誕生。新たな時代を生き抜く術を紹介する!

他人のお金で生きる!

北欧では長い間議論されてきたベーシックインカム(BⅠ)の概念(写真は’06年フィンランドでのBⅠ実現要求デモ)

「おごりたい」欲望とマッチングするムーブメント

「他人のお金で生きていく」――この新たな動きは、日本社会に浸透していくのか。収入の水準に寄らずすべての国民に最低限の生活を送れるお金を一律に給付する、ベーシックインカム制度導入を提唱する経済学者の井上智洋氏は「非常に面白いムーブメント」と理解を示す。

「国ではなく、個々人が資産を勝手に再配分している側面もあり、シェアリングエコノミーにも通じます。一部の人がやりだした突飛な事例かもしれませんが、今後広がっていく可能性はあります」と期待を寄せる。

「人間にはさまざまな欲望があり、中には人におごりたいという欲望もある。話を聞いてほしいを通り越して、レンタルなんもしない人さんのように、何もしなくていいというのはもはや究極。潜在的にはまだあるはず」

 と新たな欲望の掘り起こしが背景にあると分析する。

プロ奢ラレヤーさんやレンタルさんのような活動はまだ職業として確立されていませんが、ホスピタリティ系の仕事に分類できます。このような準職業的な事例はどんどん増えていくはず。クリエーティビティ系ではYoutuberなど10年前にはなかった新たな職業も生まれています。

 会社では何の能力もないと思われていた人が、実は自分の得意なことでお金になると気づくケースはこれから増えていくと思います。SNSでのマッチングで、潜在的な欲望と能力が顕在化し、新たな需要と供給が生まれているわけです」

皆が同じことをやりだせば格差の懸念も

 その一方で、「こうした事例でも成功例と失敗例が必ず出ます。勝ち負けの差は大きくなるでしょう」と格差の拡大に警鐘を鳴らす。

「例えば、工場のライン作業では手早い人と遅い人の差はせいぜい2倍くらい。しかし、YouTuber間の動画の再生回数は天と地ほどの差が出ます。今回のケースも皆が同じことをやりだせば値崩れしますし、もらえる人ともらえない人の差は激しくなるはず。それでも、新たな副業手段として考えてみるのはいいかもしれません」

 日本経済が鈍化の一途を辿るなか、「他人のお金に頼る」という概念は命綱になるかもしれない。

他人のお金で生きる!

井上智洋氏

【井上智洋】
駒澤大学経済学部准教授/経済学者。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。近著に『MMT 現代貨幣理論とは何か』(講談社選書メチエ)

<取材・文/女川冨由美 栗田シメイ 中野龍 竹内一晴 片岡あけの 和場まさみ 安宿緑 安英玉(本誌) 撮影/アセティア 山川修一(扶桑社) 写真/時事通信社>

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