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「ユニクロ」のファーストリテイリングは、やっぱりブラック企業なのか?

ビジネス

海外展開を加速させるにあたっての懸念

 この記事では「海外の店舗」「海外の縫製・加工工場」との関係にクローズアップして整理していきます。先んじてIR情報を読み解いてで確認した通り、ユニクロ事業の売上規模は海外のほうが上回ってきており、名実ともに「グローバル企業」と呼んで差し支えないからです。

 グローバル企業には、それにふさわしい観点での指摘が必要だと考えます。

 まず、下請け企業のひとつであったインドネシアのPT Jaba Garmindo社が倒産したことを受けた協議の履歴がファーストリテイリング社のIRリリースに残っていることを指摘する必要があるでしょう。

ユニクロ

PT Jaba Garmindo社との協議履歴(12/8筆者確認)

 本件の経緯を簡単に書くと下記の通りです。

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2014年10月 ファーストリテイリング社がインドネシアのPT Jaba Garmindo社との取引を終了
2015年4月 インドネシアのPT Jaba Garmindo社が裁判所に破産宣告を申請し倒産
2017年2月 国際アパレル労働NGO「Clean Clothes Campaign」からファーストリテイリング宛に書簡を送付(:参照
2017年7月 ジャカルタにてファーストリテイリング社・JG社協議
2018年1月 ファーストリテイリング社が本件についてプレスリリース発表
2018 年10月 JG社の労働組合代表が交渉のため来日
2018年11月 ジャカルタにてファーストリテイリング社・JG社協議
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 取引終了から倒産までの間が6か月と、比較的時期が近くなっています。PT Jaba Garmindo社の元従業員たちはファーストリテイリング社の取引終了が引き金となって倒産したものと主張し、未払いの賃金・退職金550万ドルをファーストリテイリング社に支払うよう求めています。

 一方、2018年1月の段階ではファーストリテイリング社は取引終了の理由を「取引期間中に継続的な品質問題と納期の遅延が発生したため、2014年初頭に同社に対し問題の解決を促しました。その後も、問題が解決されなかったため、相互信頼にもとづく取引関係を継続することは難しいと判断し、2014年10月に取引を終了しています」(同社リリース、2018.01.18より)と説明しており、両者の主張は完全に平行線でした。

 しかし、国際アパレル労働NGO Clean Clothes Campaignの書簡送付など、一対一のトラブルから話が大きくなってきたことを受けて、2社間の協議も行われるようになり、2018年11月にはファーストリテイリング社も下記のように発表しました。

「先方との合意に基づき、話し合いの詳細の開示は控えさせていただきますが、弊社は、現在も無職である同社元従業員への再就職促進について、労働組合代表者と引き続き議論することを確認しています」(同社リリース、2018.11.30より)

 ただし、本件は、直近の協議の結果が非公開ということもあり、労働組合が望む解決が図られているかは現状不透明です。

 続いて、2019年3月に、ニューズ・コープ社(Wall Street Journal紙・The Times紙・The Sun紙の発行元)傘下のニューズ・コープ・オーストリア社のメディアである「news.com.au」にて「‘Everyone has some form of PTSD’: Former Uniqlo employees describe toxic bullying culture」と題した記事が公開されました。

 一言でいうと、オーストラリアのユニクロ本部や店舗で勤務していた複数の元従業員による告発をとりあげたものです。労働時間の長さだけではなく、不透明な人事決定プロセスなど、企業運営体制全般について指摘されています。

 本件についてはファーストリテイリング社の声明はまだ出ていませんが、PT Jaba Garmindo社の件同様、何らかの対応が必要になるでしょう。

 今後、海外展開を加速させるにあたって、ファーストリテイリング社はこの2つの事実について、対応を真剣に検討する必要があります。海外に進出する以上は、労働慣習も各国の法律・事情に合わせていく必要がありますし、「衣料品サプライチェーンの適正化」はファーストリテイリング社が世界で尊敬される、真のグローバル企業になるためには避けては通れない課題です。真摯な解決が図られることを望みます。

ユニクロの「ホワイト/ブラック度」判定

★★★☆☆

 前提として、成果に厳しい会社ですので、非常に人を選びます。また、金銭的な成果だけでなく「手を動かし、行動したかどうか」をより重視して評価する傾向があるので、向かない人にはとことん向かない企業でしょう。

 そして、名実ともにグローバル企業となり、生産現場を含めた労働環境の厳しさについて世界各国からの批判を避けられない情勢となりました。ただし、実行力が高い企業ですので、海外マーケットからの見え方を踏まえて現場のホワイト化が今後加速する可能性はあります。その期待を込めて、★を1つ増やしました。

<TEXT/ブラック企業アラート>

ブラック企業を生き抜いた歴戦のプロダクトマネージャーが、公開情報からホワイトorブラックを判定し、率直な理由とともにお伝えします。
Twitter:@blackc_alert
note:ブラック企業アラート

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