DeNAラミレス監督が取材で「同じ言葉」ばかり使う当然
罵り合った歴史は過去のもの
ところで過去のプロ野球監督には「舌禍」を生んだ例が少なくない。半世紀近く遡るが、1970年代には西鉄ライオンズ(太平洋クラブライオンズを経て現在の西武ライオンズ)と、ロッテオリオンズ(現在のロッテマリーンズ)の間に禍根が存在した。そのきっかけとなったのが、オリオンズ金田正一監督と、ライオンズ稲尾和久監督の間に巻き起こった“舌戦”である。
両監督が今日では放送できないような差別用語を使ってお互いに罵り合うと、両軍のファンもそれに同調した。当事者間では「あくまで演出のつもり」だったとされているが、この遺恨は暴発し、1974年にはついにスタンドのファンが激昂。試合が中断し警察が出動する事態となる。
テレビカメラを愛することで知られた名監督・野村克也も、選手に対して厳しい表現を用いることが多かった。極めつけは楽天監督時代の2008年、巨人戦の勝利後に「バッカじゃなかろかルンバ!」(さくらと一郎)を歌って敵将の拙攻を皮肉った際には、翌年まで続く禍根を残した。
プロ野球は人気商売であり、「炎上商法」をやってメディアに注目されることは、必ずしも損ではない。ただし最近の若者は摩擦を好まない傾向にあるとも言われており、時代の機微に敏感なチームはこの「炎上商法」を好まないはずだ。
現役時代も監督としても、乱闘騒ぎとは無縁のラミレス。不要な衝突を恐れているからこそ、インタビューにも「お決まりの言葉」を返しているのだろう。
「ラミレス慣用句」に学ぶもの
今の時代、誰にとっても「ポリティカル・コレクトネス」は他人事ではない。発言の正確さが問われるなか、「前例のある表現」を繰り返し使うというのは、極めて合理的な判断である。余計な比喩にこだわって舌禍を招くよりもよっぽど良い。
このように、前向きな印象を与える言葉を「口癖」にしてしまうというのは、ビジネスパーソンにとっても使えるテクニックである。もっとも、ビジネスシーンでラミレス慣用句をそのまま使っても「バカか?」と思われるだけなので、そのあたりは工夫して、自分らしい日本語の表現を見つけてもらいたい。
新生DeNAにとって3度目のポストシーズンがいよいよ始まるが、果たして今年はビールかけで、かつてのようなラミレスの「はっちゃけ姿」を拝むことはできるのか。残る試合も目が離せない。
<TEXT/ジャンヤー宇都>