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半袖のスーツって…クールビズの源流”省エネルック”を着てみたら

学び

 今から約40年前、当時はまだクールビズという言葉が存在していませんでしたが、サラリーマンでも快適に過ごせる夏らしいファッションアイテムがあったんです。

クールビズ

※画像はイメージです(以下同じ)

「先代の社長である私の父も生前、夏場になると好んで愛用していました。私が物心ついた時点ではすでに市販されている商品はなかったそうで、オーダーメイドで仕立てていたほど。正直、カッコイイとは思えないんですけどね(笑)」

 数年前に亡くなった父親の思い出についてそう話すのは、金属加工会社の2代目社長を務める中尾達哉さん(仮名・33)。でも、どんな格好をしていたのでしょうか?

夏になると「省エネルック」を愛用

「昔の東南アジアの人がよく着ていた背広のスーツが半袖になっているやつです。子供のころはその格好をしている父が本当に嫌で、外で声を掛けられても友達と一緒にいるときは知らんぷりしていました。もし父親だとバレたら服装がダサイとか馬鹿にされそうな気がして……。

 でも、無視したら父がとても悲しそうな顔をしていたんです。家に帰った後、そのことを泣いて謝ったら笑って許してくれましたが、それが成人してからもずっと心に引っかかっていました。まあ、だからといってあの格好を受け入れる気にはなれませんでしたけどね(笑)」

 ちなみに中尾さんの父親がしていたのは、「省エネルック」と呼ばれるファッション。

 1979年、第2次オイルショックの影響を受けて当時の大平正芳内閣が提唱した夏用の紳士服です。当時の羽田孜首相が長年愛用していたことでも知られていますが、サラリーマンたちからは受け入れられず、社会的には失敗に終わったと言われています。

取引先とも父親の格好について思い出話

クールビズ

 しかし、節約をテーマにしていいた省エネルックは、今日におけるクールビズの源流と位置付けられています。亡くなる直前まで元気に働いていた父親は、大好きなお酒を飲んで酔っ払うと「時代がようやく俺に追いついたな」とドヤ顔でよく語っていたそうです。

「たまに夢で父が出てくるんですが、ほぼ毎回あの格好をしているんです。家では私服に着替えていましたけど、きっとそれだけ私の中でもあの姿の印象が強く残っていたんでしょうね」

 昔から付き合いがある取引先の担当者たちの間でもあの格好はインパクトとがあったらしく、今でも打ち合わせなどで会うと、父親の省エネルックについての話で盛り上がるといいます。

「何かの会合でいろんな会社の社長さんたちと記念撮影している写真があったんですが、父だけはやっぱり半袖スーツ。自己主張が強いと言えば聞こえはいいですが、違和感がハンパない(笑)。それも父親らしいなとは思いますけどね」

 そんな中尾さんですが、実は彼も1着だけ省エネルックを持っているそうです。

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