戦力外通告を受けたプロ野球選手たちの意外な転身先。元横浜DeNA投手が語る
24時間、野球のことを考えられるわけない
――代表取締役を務める株式会社I’uniqueの経営は?
小杉:もともと広告関係の会社を作りたいと考えていたのですが、今はブライダルや飲食ビジネスなど当初は想像しなかった分野にまで手を伸ばしています。どれも面白そうだと思ったからやっているだけなんですけどね。
あと、完璧な自分にならないようにしてます。僕以外のメンバーや、仕事先の現場にいる方はみなさんプロフェッショナルなので、わからないことは素直に聞いてます。「責任は僕が取るから、みんな好きに動いて」って。結果、これが一番うまく回ると思ってます。
――選手期間中に起業の準備はできましたか。
小杉:球界の空気としては「引退した後のことを考えるのを恥」という空気はあります。ただ、僕自身は2017年シーズンがはじまった時点で「今年が最後かな」という思いもあったので、同時に起業の準備も進めていました。
24時間ずっと野球のことを考えられるわけない。僕もたまに親しい現役の選手から引退後の相談を受けることもあります。野球選手は引退してからの人生のほうが当然長いから、ある程度で線引きして、バランスを取ることが大事だと思います。
「1つのことを継続しろ」ハマの番長の教え
――本書では金城龍彦選手や山本昌選手など、みなさんが影響を受けた先輩のエピソードが出てきます。小杉さん自身が、影響を受けたのは?
小杉:「ばんさん」(ハマの番長、現ベイスターズ一軍投手コーチの三浦大輔)ですね。プライベートでも一緒に食事することも多かったですし、めちゃくちゃおごってもらいましたね。
ばんさんって、僕らが球場に行くと毎日ランニングしていて、それを何十年も続けているんです。だからあれだけ長い期間(現役通算25年)活躍できたと思います。「細かいことでもいい、何か1つのことを継続しろ」と言われたのは覚えています。
――20代の転職やセカンドキャリアについてアドバイスをお願いします。
小杉:若い頃って「できる・できない」ではなく、「やるか・やらないか」だと思うんです。まだ失敗しても許される年齢なのだから、挑戦しないでダラダラするのはもったいないですよ。
やりたいことが見つからないという人は、いろんな人に会ってみることをおすすめします。やりたい仕事よりも「この人と一緒に働きたい」と思える人を見つけて、その人のために働くのが、仕事を充実させる方法になると思います!
<取材・文・撮影/シルバー井荻>
【小杉陽太】
1985年生まれ。二松学舎大学付属高校から亜細亜大学、JR東日本を経て、2008年に横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団。9年間在籍のち、2017年引退。同年、株式会社l’uniqueを創業。2019年6月、初の著書『僕たちのLIFEシフト 「戦力外通告」をプラスに変えた転職の思考』(徳間書店)を刊行