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HSPは“医学的な概念”ではない

 長沼先生の調べによれば、神経発達症を持つ子どものうち25~30%が、HSP特有の敏感さを備えるHSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)に該当するそうです。

「生まれもった遺伝的素因か、生育環境などの環境的要因か、と考えがちですが、両方のかけ算と考えるとよいでしょう。胎生期においても、胎児の生育は環境からの影響を受けて変化します。最近の研究では、遺伝子の発現には、遺伝子の翻訳にスイッチを入れるプロモーターという部分が非常に大きな役割を担っていることが解ってきました。胎児期を含めた生育環境が遺伝子発現に大きく関与しているのです」

 発達障害の場合は、医学診断を受けることで、医療費の自己負担額を軽減する「自立支援医療制度」を利用できます。

 しかし、HSPの場合は「発達障害を含む神経発達症は行動や症状で定義され、診断されますが、HSPはあくまで主観的で感覚的な問題を扱っており、医学的概念ではないので診断はできない」(長沼氏)というのが現実です。

HSPを自覚するきっかけとは

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 では、HSP当事者はどのように自分の特性に気づくのでしょうか。

「HSP当事者の多くは自律神経失調症などの身体症状に悩まされています。じっとしているだけで疲れたり、周囲の音や声にわずらわされたり、人のマイナス感情を感じとったり、極度な疲労感や倦怠感を覚えて、『なぜ、自分はこんなに疲れやすいんだろう』と悩み苦しみ、初めて自分の特性に気づきます」

 では、長沼先生はHSPの投薬治療に対してどう考えているのでしょうか。

「HSPはいろんなものに敏感であることが多く、薬にも敏感なので、副作用には注意したほうがいいです。日本の医療は“診断と薬”を用いて、悪いところがあれば取り除いて治すという発想です。

 根っこにある原因や素因に目を向け、それらを否定的に従えず、それらを受け入れ、活かしていくという考え方が必要です。『人付き合いができない』といった表面的な問題に、マイナスなレッテルを貼るのではなく、せっかく持って生まれた敏感さの特性を活かすだとか、無理させないでなぜそうなるのか探ってみようとか、そういう発想が大切です」

“クリエイティブな仕事”に活かせる可能性も

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 HSPの特性が活かせるのは、主にどんな場面なのでしょうか。

「敏感すぎて生活や精神に支障をきたしてしまう反面、普通の人が感じられないものを感じられるということは、創造性や芸術性に繋がります。自分のペースで主体的に進められる環境であれば、クリエイティブな仕事に活かせる可能性があります。

 あとは同調性や共感力の強さを活かして、人を癒す仕事に自分の特性を活かせます。カウンセラーなどの心理系や、ホテルマンのようなおもてなしの仕事にも適しているかもしれません」

 HSPの感受性は、現実的な生きづらさや自己肯定感をさげる要因である反面、自然や目に見えないものに対する特別な感性でもあるのです。

<取材・文/目黒川みより>

フリーペーパーを発行する出版社勤務を経て、現在はWEBデザイン会社にてディレクターとして勤務。お忍びで「心の問題」を扱う執筆活動を続ける

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敏感すぎる心がスーッとラクになる本

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