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他人の意見を素直に聞けない「超二流」社員につけるクスリ

学び

「ホントに聞いてるのか?」と思われたら終わり

 過去の同僚に「イエスバッター」と呼ばれていた人がいました。何かを反論や指摘する時に、会話のスキルとして「But」の前に必ず「Yes」を付けることで相手が受け入れやすい姿勢を取ってもらうようにすることを自然にやっている人でした。

 正面から反論するより「そうですね」と1つクッションが挟まることで相手の態度を和らげるという一定の効果はあると思います。ただ、あまり連発していると、やはり人間は動物なので感覚的に見抜かれてしまいます。「なんか、軽く受け流しているな?」という不信感が芽生えてきてしまったら、それを払しょくさせるのは大変なことです。

 単に相槌を打ちながら話を聞いているだけでは「聞いているふりをしている」と思われるリスクとともに、理解が深まっていきません。やはり聞いた内容を、反芻するように披露することです。

 反論したい場合でも「~ということを言っていますよね?」というように、まず相手の話を理解しないといけません。理解を間違えてピント外れなことを言ってしまったら、直してもらえばそれでいいというスタンスです。

反論はいったん口を閉じ、寝て起きてから

睡眠

 どうしても真正面から反論、全否定したくなる、ならざるを得ないようなこともあると思います。そうした時でも、いったん黙って意見を飲み込んで、一晩以上経ってから伝えるようにしましょう。

 案外、単純なもので、その場ではカッカと怒っていても、一晩寝たりご飯を食べたりしたら怒りが半減してしまうことはよくあります。冷静になってみると自分の怒りがやや自分勝手な他責の姿勢から湧き出てくるものであったりもします。

 あるいは、そもそもそこまで怒るものでもないことや、相手が悪意を持って発信していないことに気づいて、もう少し冷静にやり取りをしてみようとするなど、色々な対応の幅が広がってきます。そうした後に反論を切り出すと伝え方もまろやかになり、過剰な衝突は避けられます。

 感情にかまけた反論は極力しないにこしたことはありません。友人と飲んでいる席だったら別ですが、あくまでも仕事の場であることで自分を抑えましょう。「くだらないことを言っているな」「やっているな」と思ったとしても、仕事の場では、何かしらその行動を取っている理由があると考えます。その理由の意味や背景をどう捉えるかをいったん考えることが必要です。

 自分の言おうとしていること、やろうとしていることの筋が通っているか否かは、なかなか自分では客観的にわからないものです。ただ、気分が落ち着けば相対的には冷静に考えられます。冷静になったうえで、情熱的に話すようにしましょう。

 きちんと他人の話を聞いていく姿勢を取っていると、情報が集まって来ることに加えて、信用が積み重なっていきます。誰しも本音のところでは、自分の言ったことを素直に聞いてくれる人にしか話したくないです。仕事のうえでは他人との会話を拒否することはありませんが、誰しもが相手を無条件に信用して話しているわけでもありません。

 他人の話を聞いて、理解したことを言おうとすることは、ともすれば自分の無知を露呈したり恥ずかしい思いをすることもあります。しかし、それを恐れずに、信用というお金で買えないものを得るために聞いて、話してを続けましょう。

<TEXT/出口知史>

ぬいぐるみの進化版でもあり、小学生に大人気のスクイーズのトップブランドであるiBloom(アイブルーム)を製造販売する、株式会社ブルーム代表取締役社長。東京大学大学院工学系研究科修了後、コーポレイトディレクション、ダイヤモンド社を経て、産業再生機構など3社の投資ファンドにおいて、投資先企業の経営者として複数の会社を連続で再生・成長へと導く。約20年連続で悪化していた老舗企業や5年連続赤字で債務超過に陥った老舗企業などを復活させた。現職では成長から飛躍に取り組む。著書に『困った人の説得術』(日本経済新聞出版社)など

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