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電通社員・34歳が監督した映画が評判。「しんどい仕事も映画の修行になった」

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長編デビューに向けてプレゼンした相手は……

――広告プランナーとしての知識を持っているからこそできるプレゼンをして、本作の製作を実現させたとは伺っていましたが、それはご自身が所属している電通にプレゼントをしたと。

長久:そうです。自分の会社に「こういうことをやるので投資しませんか?」とプレゼンしたんです。『金魚』で賞を取っていますし、次は長編で展開していきたいと。会社に応援してもらいました。

 僕の思う正しい芸術を作るために、どう設計していけるか、自分の持っている技術を全部使って実現させようと。ただ、もちろん簡単には出資なんてしてもらえませんでしたよ。緻密なプレゼンをやって実現させました。

――そうだったんですね。監督はこれからも会社を辞めるつもりはないと聞きましたが。

長久:日本で作る限りは、会社を辞めるメリットをあまり感じません。基本的に僕は自分が作りたいものを作りたいので、オファーが来たらということもそこまで考えていませんし。

 それから問題なのが、日本の映画製作における監督のギャランティ。すごく安い。そのギャランティでは長い時間、作品を丁寧に仕上げるための金額には全然足りないんです。今回、僕はそうではないやり方をさせてもらえたので、クオリティを上げられましたが、会社にいないとできなかったと思います。

時間は、作ろうと思わなければ作れない

WALZ

© 2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS

――構想や仕上げ期間も考えると、何年もかかったりしますよね。

長久:だからフリーの方は本当に大変。悪しき習慣だと思います。作り終わって1本100万円とか。「え、丸々5年かかっているのに!」といったことも多いと思います。いま僕はお金を支払う立場ではないですが、まずはこうしたやり方で何作か作って、何か業界の在り方を変えられたらいいなとは考えています。

――プロデュースにもご興味が?

長久:ありますね。

――短編のときのお話に戻りますが、広告会社に入られて、忙しく仕事をされてきたなかで、あるとき、目黒シネマで映画を観たときに、「やっぱり自分がやりたいことはこれだ」と感じられたのだとか。忙しくて好きなことに目を向けられないというのは、社会人としてはどうしてもあることです。とはいえ、時間は作れると思いますか?

長久:難しいですね。僕はすごく真面目に10何年働いてきたんです。「あいつ、たまには休ませてもいいんじゃないか?」と思ってもらえるくらい。辛い仕事もたくさんやってきました。だから休みを取って作ることができた。ただ、それはちょっと古い考えなのかなとも思います。めちゃくちゃ忙しく頑張った10何年がなくても、休みを取っていい社会であるべきだとは思いますね。

――監督は有給を使われたわけですが、忙しいなかでも、時間はなんとか見つけ出せる?

長久:作るためにフルパワーを出す必要はあると思いますが、作れるとは思いますよ。運とタイミングも関係しますが。上司との人間関係とかね。でも時間は、作ろうとしなければできないのは確かです。

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