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年収1500万円の未来を捨て、猟師への道を選んだ29歳男の生き方

コラム

「終身雇用崩壊」が叫ばれるなど会社員の将来は一寸先は闇といった状況だ。会社にしがみつこうとする人がいる一方で、一足先に勤め人を卒業した人たちも……。

 bizSPA!世代の20代ビジネスマンからしたら、今の職場に定年退職まで40年超勤務できると考えるのは、夢物語かもしれない。

吉川さん

会社を1年4か月で退職して猟師になるため奈良県天川村に移住した吉川さん。季節を問わず山に入っていく。学生時代にアフリカを旅したときに得た知見も彼を突き動かした要因だったという

 そんななか20~40代の脱サラした男たちの「その後」を追跡。彼らの境遇から、明日の我が身を占ってほしい!

“約束された未来”を捨てて「命と向き合う日々」を送る

■吉川隆さん(29歳・仮名)
年収600万円→脱サラ後年収240万円

 脱サラ後の「幸福度」の基準は経済的な豊かさだけではない。

「僕は、自分で肉を獲ってこられる男になりたかったんです」と語るのは、猟師を志して20代で脱サラした吉川隆さん(仮名・29歳)だ。

 もともと彼が新卒で入社したM&Aアドバイザリー企業は平均年収1559万円、1年目でも年収600万円を稼げる超高収入企業。そんな“約束された将来”を捨て、なぜ猟師への道を選んだのか?

「会社員時代は都内で家賃16万円の部屋に住み、毎晩タクシーで深夜帰宅する日々でした。そんなとき、登山家・服部文祥さんの本と出合って。自分の頭で考えて実践する人だけが書ける“本物の言葉”に衝撃を受けたんです。自分は資本主義社会では上位かもしれないけど、『カッコいい生き方か?』と問われたら、そうは思えない。『毎日資料作りをして稼いだお金で高い外食を食べても、全然おいしく感じられないじゃないか』と」

 そうして一念発起した吉川さん。当初は週末に猟をする生活も模索したが、結局は趣味止まりになってしまうと感じて退職を決意した。

「極めて分業化されたなかで役割をこなして得られるお金よりも、生きていくためにほかの生き物を殺さなければならないという事実や手応えのほうを選びました」

自立した暮らしを継続させるため、二次ビジネスの準備

 その後、起業志望者と自治体・企業を結びつける一般社団法人の求人で採用され、奈良県の地域おこし協力隊員として完全独立までの3年間は毎月13万円の支援金を受けられることが決まった。

「今はまだ見習いです。時期にもよりますが狩猟による収入は月に3万円くらい。ほかに大工のアルバイトもしたりして手取りは20万円程度。ただ借りている一軒家が3万円しかかからないので、経済的な不自由はないですね」

吉川さん

本来狩猟時期は11~3月の間に限られるが、有害鳥獣駆除を行っており、年間を通して狩猟ができる。獲れた動物の経済価値をどう最大化させるのかが目下の課題

 移住にあたり、家族からの反対はなかったそうだが、唯一難色を示したのは同棲中の彼女だった。

「けれど、結婚を前提にした付き合いであることを伝えて説得しました。なにより、僕は子供ができたときに語る言葉を持っていない父親にはなりたくなかったんです。今では僕以上にこっちの生活を気に入ってくれています」

 そんな2人は令和初日に婚姻届を提出。支援期間終了後も自立した暮らしを継続させるため、狩猟に加えて二次ビジネスの準備にも精を出しているという。かつて自らを突き動かした“本物の言葉”を求め、彼は今日も山へと向かう。

〈成功の3か条〉
・「自分の本当の価値」を探る
・生活コストを下げる
・一緒にいてくれる人を大切に

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