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大塚家具とニトリの明暗を分けたもの。「企業の効率性・安全性」で比較

ビジネス

安全性の指標「当座比率」で大塚家具を見ると

 このような数値を見ていると、「大塚家具の経営は大丈夫なのか」、率直に言うと「倒産の可能性はあるのか」という疑問を抱かれる方も多いことでしょう。貸借対照表でこの点を確認しましょう。

 企業の倒産可能性に関しては、「当座比率」という指標を用いて確認することが可能です。「当座比率」は「当座資産」を「流動負債」で割ることによりわかります。

「当座資産」とはすぐに支払いに使うことができる資産です。主に現預金、受取手形、売掛金有価証券にて構成されます。一方、「流動負債」とは短期の借入金や買掛金など1年以内に返済期日が到来する負債を指します。つまり、すぐに支払いがやってくる負債に対してどの程度の備えがあるかを示す指標になります。

 大塚家具の当座比率は、創業以来の最悪の水準となった赤字の影響により、2016年以降に大幅に減少しています。上場企業の小売業の平均当座比率の84.13%(株式会社M&Aバンク、2019年4月13日)を大きく下回るわけではありませんが、大塚家具は在庫を販売するのにかかる日数が長いので資金に余裕があるとはいえません。

大塚家具

■大塚家具の当座比率の推移(出典:有価証券報告書より弊社にて作成。当座資産は、流動資産項目の現預金、受取手形、売掛金、有価証券を使用)

 過去10年で一度も借り入れ金の記載がなかった同社ですが、2018年の貸借対照表では初めて13億円の短期借入金が記載され、自社の資金だけでは返済ができなくなってきていることが伺えます。

企業が本当に危険な状態かも短時間でわかる

 企業規模の大きさに比べ、負債は少ないため、すぐに倒産はしないと予想されますが、事業が回復しない限りは負債の増加と金利負担の増加により、さらなら利益率の低下が予想されます。今後は、2019年2月に発表されたヤマダ電機との提携や、中国への越境ECを運営するネット通販会社ハイラインズとの資本業務提携を皮切りとした事業の立て直しが期待されます。

 損益計算書が1期間における企業の成績としての「結果」だとすると、貸借対照表はなぜそのような結果となっているのかを理解する手がかりを提供してくれます。また、「当座比率」で見たように、企業が実際に危険な状態であるかも短時間でチェックすることが可能です。

<取材・文/KT Total A&C firm>

M&A、事業承継、事業再生、補助金申請支援、資金調達やIPO支援等のファイナンス分野におけるコンサルティングを得意とするファーム。友人からの個人的な相談が多い分野である、副業、エクセルスキル、財務スキルなどについてセミナーを通して紹介している。公式サイトは「KT Total A&C

■補足1:在庫販売日数の計算方法
在庫販売日数は、[平均在庫 ÷ 売上原価 x 365]にて算出できます。売上原価は損益計算書から、平均在庫は貸借対照表から取得できます。売上原価とは、企業の1会計期間(この場合は1年を採用)における在庫が出払った総額ですので、売上原価で平均在庫を割ってあげれば、1会計期間のうちのどのくらいの間隔で在庫を吐き出しているのかがわかります。365を乗じることで日数に換算しています。平均在庫は、年初と年末の在庫の平均で算出することができます

■補足2:当座比率と流動比率
「当座比率」は、「流動比率」という別の指標と兄弟の関係にあります。当座比率は、[当座資産 ÷ 流動負債]で計算でき、流動比率は[流動資産 ÷ 流動負債]で計算できます。当座資産が、主に現預金、受取手形、売掛金、有価証券にて構成されることはすでに見たとおりですが、流動資産はこれに、棚卸し在庫・商品が加わります。つまり、すぐに売れるかはわからない棚卸し在庫・商品を分子から除いていることから、当座比率のほうがより保守的な指標といえます。大塚家具は在庫販売日数が高めの企業なので、当座比率を用いるほうが適切のため、こちらを本文では使いました

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