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「補助金が地方のガンなんや」さびれる地元と再生の現実を知るために

コラム

 実家に帰省するたびに、地元が寂れていくのを実感しているという人は少なくないのではないでしょうか。

 高齢化社会や、人口減少の煽りを受けて、日々衰退していく地方都市は数多くあります。

レトロな壁掛け時計

※画像はイメージです(以下同じ)

 地方再生の事業を多く手がけ、各メディアで積極的に発信を続けている木下斉さんの著書『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』(ダイヤモンド社)には、地方再生に挑む若者たちの熱意が描かれています。

著者の体験をリアルに描くために小説のカタチに

 本書の著者である木下さんは、高校1年生の時から、早稲田商店街の活性化に携わり、高校3年生の時に社長に就任します。大学院を修了後、熊本の商店街活性化など、さまざまな地域での街づくりに携わってきました。現在は一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事を勤めています。

 また、地方再生に関する書籍も多く執筆されています。今回は、敢えて小説という手法で、地域再生について論じています。なぜ、このような形式にしたのかを著者は次のように語っています。

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ロジカルに書く経営書からは、当事者同士の感情の衝突や経営面でのプレッシャー、そして何よりそれらにめげず前に進んでいく者たちの「粘り」が、どうしてもこぼれおちてしまいます。そのため、今回は、ロジックとエモーションという両輪をともに伝えるべく、小説形式で地方での事業のリアルを書くことにしました(4P)
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 他人の成功を妬む地域住民、高圧的な態度で補助金をばらまく官僚、名ばかりのコンサルタントなど、それぞれの思惑を持った登場人物が、主人公たちの事業の行く手を阻みます。

 そうした幾多のトラブル描写が、心情描写と相まって、現場の空気感を体験することができます。高校生の頃から、地域再生の現場で働いてきたからこその体験が本書には惜しげもなく盛り込まれています。

実家の商店の店じまいから物語は始まる

地域再生入門

『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』(ダイヤモン社)

 本書の主人公は、大学進学時に上京し、東京の中堅電機メーカーに就職した瀬戸淳です。彼は社内調整に明け暮れる日々に疑問を持ちながらも、他にやりたいことがなく、なんとなく毎日を送っています。

 実家は、地元の商店街で小売店を営んでいましたが、父が亡くなって以来、母が代わりに店を切り盛りしていました。しかし、ある時、母が「老後を楽しみたいから、店を閉めたい」と言い出し、廃業手続きや不動産売却などといった「実家の片付け」を頼まれます。

 東京と地元を新幹線で往復し「片付け」をする日々を過ごすなか、ひょんなことから、高校時代の同級生で当時はやんちゃをしていた佐田隆二と再会を果たします。

 佐田は、現在は、地元で人気の店を複数出店する経営者になっていました。衰退していく一方だと思っていた地元で活躍している佐田との交流を続けるうちに、瀬戸はこのまま、実家を売り払って、東京でサラリーマンを続けることが正しい道なのか思い悩むようになります。

 そうして、佐田とともに事業を起こし、シャッター街の再生、地域再生へと本人自身も思わぬ方向に人生が転がり始めます。

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