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「補助金が地方のガンなんや」さびれる地元と再生の現実を知るために

コラム

「補助金が地方のガンなんや!」に込めた真意

 ストーリーの中盤、佐田と共に興した実家の再生事業が軌道に乗り出したところで、瀬戸は地方再生政策のモデル事業のための多額の補助金を手に入れます。

 しかし、補助金の仕様には役所や、商工会議所、国などの複数の意思決定の承認が必要であったり、事業の計画変更が容易でなかったりするなどトラブルが続発。それまで、一緒にやっていたチームとの齟齬が生じ仲違いをしてしまいます。

 著者は本書のみならず、さまざまなメディアで、補助金の存在こそが地方をダメにしていると指摘。帯にも大きな文字で「補助金が地方のガンなんや!」と書かれており、「赤字の補てん」として投入される補助金が「投資」として利益をあげにくい実態に迫ります。

 ただ、予算を執行することが目的になってしまい、投資を回収するという考えが政府にはなく、補助金が打ち切られた途端に、地方では事業そのものが立ち行かなくなってしまうという構造があるそうです。

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 補助金は、最初は軽い気持ちで「使えるものは使おう」と手を出す人が多くいる。しかし、補助金を貰うからこそ事業計画がいい加減になり、そのうち何をやるのにも補助金がなければ事業を立ち上げられないような状況に陥り、さらにもっと額の大きい補助金を求めるようになる(P316)
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 一時的には地方を盛り上げても、長期的に見れば補助金なしでは立ち行かなくなった結果、自分で稼ぐ力を削いでしまう仕組みだと、著者は指摘しています。

東京でモヤモヤしながら働いている人こそ

東京・通勤イメージ

 ここに書かれているストーリーは、フィクションではありますが、著者が過去に関わってきた事業などをベースに書かれています。

 具体的な成功事例や、地方再生に関する詳細についてやや欠けるかもしれませんが、注釈やコラムでは、本文中に書ききれなかった「地域再生」にまつわる諸問題や構造について、詳しい解説がなされています。

 地方創生と聞いても堅苦しさを感じて、なかなか手に取りにくい人や、主人公のように上京してもやりがいを感じられず、漠然と将来への不安を抱いている人には、人生の指南書として読んでほしい一冊です。

<TEXT/湯浅肇>

写真をメインに数多くの時事ネタやマルチメディア関連の記事も執筆。常に斬新な切り口で情報発信を目指すアラサー男子

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