核兵器がロシアの最終手段か。「ウクライナ侵攻」で考えられる2通りのシナリオ
2022年3月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領が国会で演説を行ったことは記憶に新しい。もちろん史上初めての出来事であり、彼のメッセージは広く日本人の心にも届いたようだ。とはいえ、我々素人からすると、状況は変わらず、むしろ悪化の一途をたどっているように思える。
前回の記事で、この戦争が始まった経緯を取り上げた。今回は核兵器が使われる可能性、この戦争はいつ終わるのか……などをわかりやすく解説したい。引き続き、東京大学先端科学技術研究センター専任講師で、ロシアの軍事・安全保障政策を専門とする小泉悠氏に話を聞いた。
なぜベラルーシは経済制裁を受けているのか
――経済制裁の段階になって突然ベラルーシの名前が登場しましたが、なぜ一緒に制裁を受けているんですか?
小泉悠(以下、小泉):ベラルーシは、ウクライナ侵攻のための基地をロシアに提供してるんです。その理由は、ロシア側からよりもベラルーシからウクライナに攻めていくと、首都キーウまで距離も短いし、高速道路1本でつながっているので、進撃しやすいからです。
――ベラルーシもロシアと同じ主張だということですか?
小泉:世界中から制裁を食らうことはわかっていましたし、万が一NATOとの戦争になったら基地を提供しているベラルーシも戦場になります。他国の戦争で自分の国土が戦地になるなんて絶対に嫌ですよね。だからベラルーシは、ロシアとの軍事同盟は結んでいるものの、「普段からロシア軍がベラルーシ国内に駐屯するのは絶対にやめてくれ」と主張していたんです。
狡猾さと勝負度胸を持ったルカシェンコ
――ではなぜ、今回は基地を提供してしまったのですか?
小泉:この2年、ベラルーシのルカシェンコ政権がロシアに頭が上がらなくなったからです。アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、面白おじさんみたいにも見えますが、狡猾さと勝負度胸があります。ロシアとの関係が悪くなると、EUにサッとすり寄って行く。
だけどEUに近づきすぎると「お前の国、独裁じゃないか。民主化しろ」って言われてしまうので、そうするとまたロシアのほうに戻っていくんです。ロシアとエネルギー問題で揉めると、今度はアメリカに近づいてみたり……。どの勢力にも取り込まれず、うまく生き残った独裁政権なんです。