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核兵器がロシアの最終手段か。「ウクライナ侵攻」で考えられる2通りのシナリオ

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ウクライナは降伏したほうがいい?

――ロシアとウクライナでは、軍事力では明らかにウクライナが劣勢です。「勝てることがないならば、被害を最小限にするために降伏すべき」という意見も一部では存在します。本当にそれで良いのか、降伏した場合のメリットとリスクを教えてください。

小泉:降伏すればロシアの攻撃は終わるので、もちろん死者の数は減ります。しかし、降伏した後に今まで通りの暮らしが戻るかというと、そうは思いません。すでにウクライナ南部のメリトポリは、ロシア軍に制圧されて市長が捕まりました。

 そして、市長代理称する人物がロシアから送り込まれてきて、市の行政をロシアに握られてしまっているんです。その先どうなるかというと、ロシアの占領に反対する人は脅しを受けたり、拉致されて行方不明になる……つまり殺されるということですね。

この戦争、一体どう終わるのか

小泉悠氏

小泉悠氏

小泉:「降伏してロシアに主権を握られたとしても、生きていきたい」というのもひとつの哲学だと思います。例えばキーウ市長が降伏を選んだら、それもやむを得ないと思います。でも、今のところの状況を見ると、ウクライナ人は「損害や死者が出ることは知っているけど、自分たちの国と町を守る」という姿勢なんですよね。

 究極の状況に置かれた人たちの究極の選択には、私たち外野がどうこう言える権利はないと思うんですよ。私は侵略には抵抗すべきだと思っていますが、自分がその状況におかれたら簡単に降伏を選ぶかもしれない。逆に、今ウクライナに対して降伏すべきだと言っている人も、究極の状況に置かれたから抵抗を選ぶかもしれませんよね。

――ではこの先、ウクライナが抗戦しながらもやがて占領されていくか降伏するしか道はないんでしょうか?

小泉:ロシアがこの戦争に耐えられなくなるのが先なのか、ウクライナが先に音をあげるのが先なのかという「根比べ」になると思います。ウクライナが旧ソ連でも第2位の軍事力を持っており、西側からの武器援助も得ているのでかなり抵抗できていますが、取られた場所を取り返すような力には乏しい。一方、ロシアには、時間が経つほど経済制裁が効いてくるんです。すでに多くの経済的損失を出していますし、そうなるとカントリーリスクを嫌った外資は逃げ出していくという悪循環が起きている。

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